世界的な「ドル離れ」が起きている
3月19日、ニューヨークで金先物価格は、一時、1トロイオンスあたり3,052.4ドルに上昇した。データがさかのぼれる期間で最高値を更新した。金価格の急上昇は、一体、何を私たちに教えているのだろう。
そもそも、黄金色に輝く金は、過去の長い歴史の中でも多くの人を魅了してきた。金の特徴は、なんといっても産出量が少ないことだ。一方、金を手にしたい人の数は圧倒的で、需要と供給の関係から言っても金の価値はとても安定している。
その金価格が急上昇する背景には、金の需給関係に加えて、世界的にドルから金へのシフトが進んでいることがある。ドル離れで、ドルの価値が下がっているため、ドルで表示される金の価格が上がっていると考えるとわかりやすい。ドルの価値下落の裏返しと言える。
ドル減価の要因の一つに、世界的なドル離れが加速していることがある。中国、インド、ロシアなどの中央銀行は、米ドルの代わりに金の保有を増やしている。それは、当該国の中央銀行による金保有額の増加をみると明らかだ。
中国やインド、中東諸国では、個人も金の保有を重視するケースが多いと言われる。それらの国の人々にとって、自国通貨やドルよりも安心できる資産が金なのだろう。それに加えて、近年、中国経済の成長率低下、中東情勢の緊迫感の高まりで、より安全性の高い金に対する需要は一段と高まっている。
日本でも「1グラム1万6078円」まで上昇中
重要ポイントは、金の価格上昇が続くか否かだ。年初以降の金の価格上昇は想定以上で、利益確定に動く投資家は増え、目先、金価格が調整する可能性はあるだろう。ただ、少し長い目で見ると、主要国が自国主義、保護主義、軍備増強に走る中、世界の経済・安全保障はさらに不安定化することが想定される。トランプ政権の政策運営にも不安要素が多い。
そうした状況を考えると、外貨準備の手段としてドルの保有を減らす国が増えることも予想される。中長期的に世界的にドル離れは続き、金の需要が増える可能性はあるとみる。
わが国の金価格も値上がりが顕著だ。3月21日、田中貴金属工業の金店頭小売価格は1グラムあたり1万6078円に上昇した。
その主要因は、世界的に金の需給関係がタイトなことだ。見逃せないのは、世界的にドル離れが加速していることがある。特に目立つのは、主要国の中央銀行の金買い意欲が強いことだ。
外貨準備の対象として、これまでは基軸通貨であるドル保有が一般的だった。ところが、最近、世界情勢の変化などでより価値が安定した金の保有を増やしている。