クリント・イーストウッド監督の最新作が、51年ぶりに日本国内では劇場公開を見送られた。映画業界で今、何が起こっているのか。ジャーナリストの松谷創一郎氏は「観客動員がコロナ禍以前に比べて5000万人減っている。これは日本だけでなく世界的に起こっている現象だ。いよいよ映画館離れが決定的になりつつある」という――。
映画が上映中の映画館
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イーストウッド監督作が配信スルーに

昨年12月、クリント・イーストウッド監督の最新作『陪審員2番』がひっそりと公開された。94歳のイーストウッドにとって、最後の監督作になると考えられている作品だ。

しかし、日本で公開されたのは映画館ではなく、動画配信サービスのU-NEXTだった。イーストウッドの監督作品が映画館で公開されない事態は51年ぶりであり、極めて異例のことだ。

この特異な状況の背景にあるのは、日本における外国映画の著しい不調だ。

2024年の映画産業を概観すると、観客動員は前年比マイナス7.1%、興行収入は前年比マイナス6.5%となった。これはコロナ禍後の回復傾向が一段落したことを示す数字だ(日本映画製作者連盟「2024年(令和6年)全国映画概況」より)。

特筆すべきは、日本映画の興行収入シェアが75.3%という驚異的な数字を記録したことだ。これは1958〜1961年の映画全盛期と、2020〜2021年のコロナ禍以来の高水準となる。