「恋人」という関係性が存在しない

恋愛や結婚のあり方、人との対し方に関して、エジプトと日本をくらべたときに慣習が異なるところはずいぶんあります。

上でも書いたように、エジプトでは好きだと告白したり、結婚前に交際する文化がないということもそうです。

もしお互いに相手のことが「いいな」となったら、その時点で結婚に進むことを考えて、親にも相手を紹介します。その場合、女性側の親に男性を紹介してから、男性側の親に女性を紹介する順序が一般的です。

「恋人」という関係性がそもそもないともいえます。

エジプトには「カレ(彼氏)」や「カノジョ(彼女)」に当たる言葉がありません。そのため、もし、そういう意味の言葉を使いたいときには英語を借りて「Boyfriend」、「Girlfriend」と言うしかなくなります。

そうすると、相手のステータスは、彼氏、彼女ではなく“フレンド(友達)”になります。意識のうえでもそうなるので、「友達同士だったらキスはしないよね」ということになるわけです。イスラム教でもキリスト教でも、友達という関係性であれば、キスなどはしないということが前提としてあります。

結婚式「誓います」の重みが違う

交際期間が長くなると愛が冷めてしまうのではないかというイメージもあります。

そうなるよりは、お互いを想い合えているうちに結婚したほうがいいのではないかという感覚もある気がします。

結婚前に同棲するということも考えにくい。

理由のひとつはやはり、ステータスがフレンドであるなら、一緒に住むのはおかしいという感覚があるからです。

もうひとつの理由は、イスラム教でもキリスト教でも(※)、バージンで結婚するのがいいとされているからです。

結婚式で手を取り合う新郎新婦
写真=iStock.com/LumiNola
※写真はイメージです

結婚式で牧師さんが誓いの言葉を読み上げたとき、日本の人たちは、とくに内容を気にせず「誓います」と答えている場合が多いのではないかと思います。

※編集部注:エジプトでは、人口の9割がイスラム教徒、1割がキリスト教徒です。イスラム教徒やキリスト教徒であればそうはいきません。

誓いの言葉に対しては、ピュアであることを前提にして「イエス」と答えているので、そこで嘘はつけない、嘘をつきたくない。

そんな気持ちが強いのです。