「茨城LCC空港」人気:「安さ・気軽さ」が風評被害吹き飛ばす
被災地で苦戦を強いられているのは観光業だ。震災や津波被害より、福島第一原発事故の影響が大きい。事故が起きた福島県はもとより、隣接する茨城県でも、「県内の観光業は、今も震災前の状態まで回復できていません」(茨城県東京事務所主任政策員・村上宏氏)と、渋い表情だ。
例年2月から3月にかけて開催される「水戸の梅まつり」の来場者は、2012年は57万8000人と、震災前に比べて45%の減少。海の観光地・大洗では、アクアワールド茨城県大洗水族館は入場者数で横這いを維持しているが、海水浴場のほうは閑散としている。
そんななか、下馬評を覆して健闘しているのが、10年3月にオープンし、12年に2周年を迎えた茨城空港。「安い・気軽・コンパクト」をコンセプトに、開港前からLCC(格安航空会社)との提携に力を注ぎ、シンプルな建屋構造にするなどコストダウンに努力してきた。そのありさまは「茨城LCC空港」と呼んでいいほど、潔い。
もともと滑走路は航空自衛隊・百里基地との共用だ。乗客はターミナルビルから歩いて飛行機に向かい、階段式のタラップを上って搭乗する。
空港までのアクセスについては自動車利用にほぼ特化。ターミナルビル近くに1300台を収容する大型駐車場を設け、駐車料金は期間にかかわらず無料としている。
こうした工夫が認められ、国内ではLCCの雄スカイマークが神戸便の設置を決定。北海道の新千歳空港との間にも定期路線を運航中だ。さらにこの夏、期間限定で就航した沖縄・那覇便も好調な搭乗率を受けて秋以降の定期便化が決定した。
海外便のうちソウル便は震災以降休止中だが、上海便のほうは2012年になって週5往復から週6往復に増強、チャーター便から定期路線に昇格するなど、着実に存在感を増している。風評被害が収まらない中でのこの人気、地方空港再生のヒントにもなりそうだ。