建設特需:予算はついたが「塩漬け」も多い

【地元建設業】工事額2倍/復興予算の多くは建設業に。だが自治体や地元建設業のキャパシティーを超えている。(読売新聞/AFLO=写真)

土木工事や建設工事を業とする企業にとっても、震災復興は大きなビジネスチャンスである。

公共工事を受注した企業が前払金保全のために加入する「公共工事前払金保証」請負金額の推移を見ると、震災被害の大きかった宮城県では2010年度の2倍以上にも達している。それだけ工事が増えているのだ。

この建設特需、現状はまだ序の口といっていい。

というのも、11年度に計上された復興予算は額が大きすぎて年度内に使いきれず、40%が翌年度回しになっているのだ。今年度は、そこへさらに12年度予算が加わる。(※12年8月時点)

発注元となる自治体では、工事予算を見積もったり設計を監督したりする技術者が大幅に不足している。そのため必要な入札をすべて実行することができない。

入札では工区を細かく分けるなどの措置をとることで地元企業が優先されているのだが、人手を確保できず、応札できない会社も多いという。

「被災地では建設関係の技能工が不足し、大工や鉄筋工では震災前より労賃が3割がた高くなっています」

大手ゼネコン関係者はこう話す。

また建築工事を行おうにも、前提となる瓦礫の撤去が進んでいない。宮城、岩手、福島の3県の震災瓦礫のうち、12年6月末時点で処理が終わっているのは全体の20%。人手不足に加え、処分場や中間貯蔵施設の数も足りず、作業がなかなか進まないのだ。

特に福島県の場合、放射能を帯びた瓦礫や土砂の処理方法や保管場所が決まらず、手がつけられない事態になっている。

政府は14年3月末までにすべての瓦礫の処理を終えるという目標を立てているが、「残り2年足らず。この期間ですべての瓦礫の処理を終えるのは、非常に困難だと思います」というのが民間の見立て。

さらに復興の障害となっているのが、自治体による震災後の土地利用計画が決まらないこと。高齢者の多い被災住民には新築のための資金が用意できないとか、高台移転ではなく元から住んでいた場所に戻りたいと希望する人も多く、新たな街づくりのビジョンの合意形成が難航している。

「建設関連の工事が本格化するのは12年度以降と見られます。阪神淡路大震災の復興は3年でほぼ完了しましたが、このような事情で、今回の東北被災地復興にはかなり時間がかかることになりそうです」

被災現場の「金(かね)はつけども工事は進まず」の状態は、まだ当分続きそうな雲行きだ。