WOWOW、スカパー!の加入者は急減

一方、有料放送も急速に輝きを失いつつある。

WOWOWは、会員数が2019年の290万件をピークに急速に減少、2024年末には52万件減の238万件にまで落ち込んだ。これは、草創期の1997年の水準に並ぶ数字だ。

サッカーやテニスなど大型イベントの放映権を獲得して会員を増やしてきたが、スポーツ大会頼みでは限界があることを露呈、オリジナルドラマもヒット作に恵まれず、視聴者をつなぎ留める牽引役が見当たらなくなった。このため、コロナ禍の巣ごもりでサブスクリプション(定額購入)型サービスの特需が起きたにもかかわらず、その波に乗りそこなった。

スカパー!もまた、加入者の急減に苦しんでいる。映画、スポーツ、音楽、ドラマ、公営競技など多彩な約70チャンネルが見られるメインサービスの「スカパー!」(ほかに約130チャンネルが見られる「スカパー!プレミアムサービス」などがある)は、2016年に220万件の加入者を記録し、その後はおおむね横ばい状態が続いていたが、2022年から2024年末にかけて24万件も減り、ついに200万件の大台を割って192万件となった

下げ止まりの特効薬はすぐには見当たらず、減少傾向は加速しかねない。社内では「今後の会員数は減る一方で、決して増えたりはしない」と悲観的な見方が広がっているという。

ちなみに、NHKの衛星放送の受信契約数は、2024年9月末で2179万件。契約総数4080万件の半分でしかない。

タブレット端末でネットフリックス内で作品を選んでいる手元
写真=iStock.com/hocus-focus
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ネットフリックスは加入者1000万を突破

日本ではなじみのなかった有料コンテンツ市場を開拓してきた衛星放送だが、その果実はネット配信サービスに持っていかれてしまったようにみえる。

有料動画配信サービスの市場は、コロナ禍の巣ごもりを機に拡大の一途で、国内全体で利用者は4000万人を超えたともいわれる。利用者数は急増しているうえ非公表のケースもあるため単純な比較は難しいが、把握できる範囲で見てみると2015年に日本に上陸したネットフリックスは、会員数が2020年に500万人、2024年6月には1000万人を突破したと公表している。

全世界では有料会員数が3億人を突破したといわれるだけに、日本で1000万人というのは驚くような数字ではないかもしれない。ただ、1000万という数字は、4885万世帯の20%超にあたる。映像サービスの有料契約は、500万件程度が上限とみられていただけに、インパクトは大きい。

Amazonプライムの特典であるAmazonプライム・ビデオは、会員数を公表していないが、利用者数ではネットフリックスを上回るという調査もある。

国内勢では、Paraviと統合したU-NEXTが2024年11月で約453万人を数える。日本テレビ系のHuluも2024年9月で約280万人という。

いずれも、衛星放送のWOWOWやスカパー!の有料会員数をあっさり抜いてしまった。無料サービスとなると、YouTubeやTVer、ABEMAなどが、広く浸透しているようだ。

「好きな時間に好きな番組を見られる」ネット配信の圧勝

メディア特性の面からみると、衛星放送に比べ、ネット配信サービスの優位性は一目瞭然だ。

・いつでも見たいときに見たい番組を見られる(放送時間に捉われない)
・ネット環境があれば、どこでも視聴できる(専用アンテナなど受信環境の制約が少ない)
・受信端末はスマホ・パソコン・テレビなど多様な選択肢がある(テレビに限定されない)
・利用料金が安い(衛星放送の月額3000円~5000円に対し、月額500円~1500円程度)

等々。

ほかにも、番組のラインナップが豊富で多彩なオリジナル作品を用意し、視聴履歴や好みに応じてオススメ作品を自動的に提案するパーソナライズ機能も備えるなど、さまざまな視聴者のニーズに応えられるきめ細かいサービスを提供している。