イチロー氏の名言は検診にも通じる
こうしたことを書くと、ときに「推奨されていない検診のがんになったらどうするんだ」といったご批判を受けますが、有効な検診がないのですから仕方がありません。
じつは、推奨されている検診ですら、その有効性はみなさんが期待するほどには高くないのです。たとえば乳がん検診は乳がん死を減らしますが、その割合は20%ほど。言い換えれば、乳がん検診を受けていても8割は防げません。2年に1回の検診を1年に1回にしても、乳がん死の減少はほとんど変わらない一方で、害は増えるのです。
以前、野球のイチローさんは「自分にコントロールできることと、コントロールできないことを分ける。コントロールできないことに関心を持たない。そして、できるだけの準備をする」と言いました。名言だと思います。がん検診だって同じです。防げるがんと、防げないがんを分け、有効ながん検診はしっかり受け、防げないがんについては悩まないのがいいでしょう。
がんの予防方法は、がん検診だけではありません。むしろ、初めから「がんにならない生活習慣」を心がけたほうが、検診を受けるよりも効果的です。具体的には、禁煙、節酒、減塩や野菜・果物の摂取といった食生活の改善、身体活動、適正体重の維持です。生活習慣は、自分でコントロールできます。がんだけでなく、動脈硬化などのほかの病気の予防にもなるのでさらにお得ですよ。