最後かつ最大のチャンスを逃した
フジテレビは27日、元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルをめぐり、2度目の記者会見を開いた。閉鎖的な会見と猛批判を浴びた最初の会見から10日、今回は参加者を限定せず、映像撮影も可能なフルオープン形式で行われた。しかし大失敗を経てのやり直し会見ということであれば、非常に中途半端な内容だったと言わざるを得ない。
いくら質問数を無制限にしようが、多くの参加者を受け入れようが、会見の勝負は最初の30分。記者からの質問はなく、経営陣のみが話せるこの30分間をどう使うかが、フジテレビの今後を左右する“最後にして最大のチャンス”だと考えていた。
ところが、フジテレビはこのチャンスを逃してしまう。むしろ30分という短い時間で、フジテレビが抱える根本的な問題を露呈する形になってしまったのだ。そのきっかけとなった発言や行動は3つある。
まず、取締役相談役の日枝久氏の不在が挙げられる。日枝氏は、フジ・メディア・ホールディングスの金光修社長が「企業風土の礎をつくっているということに関しては間違いない」と発言するほど大きな影響力を持つ人物。その日枝氏を会見に出席するよう説得できず、中途半端な物言いに終始したため、視聴者に「何かを隠しているのではないか」という印象を与えてしまった。
その時点でマイナスからのスタートである。23日~24日の2度にわたりフジテレビ労働組合が意見書で日枝氏の出席を求めていたが、結果的にその要求をスルーする形となり、経営陣と現場の乖離が明るみになった。
「視聴者」へのメッセージが不足していた
次が、被害者となった女性に関しての発言だ。当初はホームページに社員Aの関与を否定するコメントを出していたが、会見で「女性が当該社員に対して嫌悪感を示したことがあった」と明言した。大事な30分の中でこう言い切るのは相当なこと。面談の際には言っていないが、それ以外では何かがあったと匂わせている時点で、フジテレビのガバナンスがしっかり機能していないとわかる。
そして3つ目が、視聴者へのメッセージ不足だ。テレビ界において、これだけ大きな騒ぎになったのは極めて稀なこと。テレビっ子だった私でも、62年の人生で初めて体験する騒動だ。確かに冒頭でフジテレビの会長・嘉納修治氏(当時)と社長・港浩一氏(当時)は「視聴者の皆様」という単語を使い「申し訳ございませんでした」と頭を下げた。しかし一番の顧客である視聴者に対して、もっとお詫びやメッセージを発信する必要があった。
私は会見前に各メディアで「第三者委員会を隠れ蓑にしてはいけない」と発言してきた。懸念していた通り、第三者委員会の説明に長い時間を費やしてしまったことが非常にもったいない。