労働者派遣法では派遣先が契約前に面接を行ったり、年齢や性別を指定することを禁じている。しかし、実際は形骸化しており、「打ち合わせ」と称した面接が横行している。

「本当は聞いちゃいけないはずなのに、『差し支えなければ年齢を教えていただけますか?』って聞かれます。そりゃ差し支えありますって……」

正直に38歳であることを告げた藤田さんだったが、あまりいい気はしなかったという。同じく38歳の中村さんも似たような経験がある。

「それなりに経験を積んでいる人を求める企業もあるので、まだ30代後半だとニーズもあるようです。ただ、40代になっても今と同じように採用してもらえるか、といえば不安になりますね」

年齢の壁は男性にも立ちはだかる。前述の坂本氏の知人は都内で仕事が見つからず、現在は妻子を東京に残して名古屋に単身赴任中だという。

「正社員ではないので、当然、単身用の住まいは自己負担です」(坂本氏)

派遣で働き始めた頃は時給がよく、融通のきく、自由な働き方に満足していた。やがて40代に近づくにつれ、派遣社員たちは不安に苛まれていく――。

「今、どうしたらいいかわからないというのが正直なところ。派遣先で中途採用の選考をしているのですが、やっぱり年齢から見ているんですよね。よくて30代前半までで、それ以降はもうだめ。そういうのを見ていると、もし私が正社員を希望しても面接にすらたどり着けないんだろうな、って思いますね」(藤田さん)

一方、中村さんは紹介予定派遣を希望したことがある。これは、一定期間派遣社員として働き、期間内に派遣先企業と本人が合意すれば、派遣先企業で直接雇用されるという制度だ。