「ないと不便」に変えれば普及すると読んだのか
もともとマイナンバー自体は、すでに国民全員が保有している。長年、リベラル派が反対してきた「国民総背番号」は実現しているのだ。銀行口座を維持するためにはマイナンバーの提示が求められているなど、マイナンバーの利用拡大も進んでいる。ところが政府はマイナンバーカードというプラスチックカードの普及に血眼になった。そこにはプラスチックカードなどの利権が存在するという穿った見方もあるが、岸田官邸で首相を支えてきたブレーンのひとりは、「マイナンバーカードの普及という目標を政治が設定してしまった結果、官僚機構の中で普及率引き上げが自己目的化した」と見る。
その決め手として政府が打ち出したのが、2024年12月での現行保険証の廃止だったのではないか。「マイナンバーカードがあると便利」から「マイナンバーカードがないと不便」に変えたのである。マイナンバーカードが無ければ病院にかかることができない、という恐怖心を国民に与えれば、マイナンバーカードが完全に普及すると読んだのだろう。
現在のマイナンバーカードには有効期限がある
おそらく、2024年12月を期限にしたのにも理由がある。実は、現在のマイナンバーカードには有効期限があるのだ。カード発行から10回目の誕生日を過ぎると使えなくなる。カードが発行され始めたのは2016年1月なので、早ければ2025年1月以降、有効期限が来るカードが出始めるわけだ。更新手続きをしなければ無効になるので、当然、普及率に影響する。巨額の予算を使ってポイントを大盤振る舞いしてまで普及率を上げたのに、期限が切れて失効する人が増えれば、普及率は再び低下に向かう。
前述の全国保険医団体連合会の調査で、トラブル内容に「マイナ保険証の有効期限が切れていた」というものが20%に相当する1799機関から報告されているが、まさに「期限」の問題が到来している。カードそのものの期限は約10年だが、データも5年ごとに更新しないと無効になることはあまり知られていない。