スポーツや部活動から暴力や暴言などがなくならないのはなぜなのか。神戸親和大学教授の平尾剛さんは「親の中には『スポーツにはある程度の理不尽が必要』と考える人がいるが、それは誤りだ。そのような環境下で人生に必要なタフさが身に付くことはない」という――。
コーチと一緒にゲームプランを練るジュニアバスケットボール選手
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「理不尽な指導」に悩む子を持つ親からの相談

スポーツに励む子供を持つ親から、指導者の指導方法と、それに困惑する子供にどう声掛けをすればいいか相談を持ちかけられることがしばしばある。

先頃、ラグビーをしている友人家族から、タックルへの恐怖心が拭えない息子にどう接すればよいかと訊ねられた。指導者は、タックルには勇気が必要だから「とにかくいけ!」としか言わない。試合では脳震盪で退場する子供が後を絶たず、救急車を呼ぶことがままにあるのだとか。不安を募らせるばかりの息子はどんどん表情が曇り、その様子が心配でならないという。

また別の親からは、サッカーをしている小学生の息子が指導者の暴言に悩んでいると相談された。息子はミスに対してボロカスに詰められるなど、心ない言葉に傷ついており、そんな指導から逃れたい一方、ずっと一緒にプレーしてきたチームメイトとは離れたくなく、またサッカーが大好きだという気持ちもあるからと葛藤を抱えているようだ。

親はそんな息子に寄り添わなければと思う反面、自身が野球経験者で、ときに暴力をも伴う指導を受けてきたから、少しくらいの暴言ならば致し方ないとも感じていて、悩んでおられた。

いずれの悩みも指導者の「ぶっきらぼうさ」に由来している。

こうした相談を受けるたびに、子供を取り巻くスポーツの課題は根深いと感じる。根性論的な指導であれ、暴言であれ、「ぶっきらぼうな指導」がまかり通る現状は可及的速やかに改善しなければと思わされる。

なぜ「ぶっきらぼうな指導」がなくならないのか。その背景には、たとえ理不尽さを伴ったとしても「スポーツには厳しさが必要である」という信憑がある。