オール・オア・ナッシングでパニックになる

ではパニックを起こしやすい人はどうでしょうか?

こちらは不機嫌なタイプというより、心配性だったり、緊張しやすい性格だったり、思い詰めるタイプだったりします。ひと言でいえば、気持ちに余裕のない人です。

たとえば頼みごとをして断られただけで、「じゃあ、わたしはどうなってもいいの?」と相手をなじるような人は、断られただけですべておしまいだと思い込んでいるのです。

ほかの人に頼んでみるとか、同じ人にもういちどきちんと説明して頼んでみるとか、自分でやってみる工夫を考えるとか、できないなら仕方ないじゃないかと割り切るとか……そういったさまざまな考え方がまったく浮かんできません。オール・オア・ナッシングです。しかも、起こりうるあらゆる事態の中で、最悪の結果だけを信じ込んでしまいます。

「もうダメだ」とか、「なにもかもおしまいだ」といった受け止め方をするのです。

その結果、行動もメチャクチャになります。

パニックというのは判断力や思考力がかぎりなくゼロに近づいた状態ですから、常識では考えられない行動や態度を取ってしまいます。

立ち直れるピッチャーと崩れるピッチャーの違い

でもこういった行動や態度というのも、決めつけが入り込むからですね。自分は正しい、相手が100パーセント悪いと決めつければ、少しの反論を受けただけでカッとなります。

かならず成功させなくちゃと思い込めば、小さなミスでもガタガタになります。

自分に大きな不幸が待ちかまえていると思い込む人は、ちょっとした事故にあっただけで「つぎはなんだ?」とおびえてしまいます。想定外のことだけでなく、想定していることが起きても一気に最悪の結論を出してしまうのです。

たとえば、高校野球でもプロ野球でも、それまではすごくいいピッチングをしていたのに、ホームラン一本打たれてガタガタに崩れるピッチャーがいます。

すると本人は、試合後のインタビューで「あの一本で自分を見失った」という意味のコメントを残します。

「打たれた瞬間、なにがなんだかわからなくなって」とか、「頭の中が真っ白になって」といったことです。

けれども立ち直るピッチャーもいます。たった一球の油断がホームランになったとしても、それ以降はピシャリと抑えるピッチャーです。

マウンドの投手
写真=iStock.com/Dmytro Aksonov
※写真はイメージです

そういうタイプは試合後のインタビューで、「気持ちを切り替えた」という意味のコメントを残します。

「打たれたものは仕方ないから、ショックを引きずらないようにした」
「まだ負けたわけじゃないと自分にいい聞かせた」

こういったコメントを聞くと、パニックに陥らない技術がわかってきます。

受けるショックは同じでも、すぐに気持ちを切り替えられるかどうかということですね。