CSRは「トレンド」も大切

各社がプラスチック削減に向けてさまざまな試行錯誤を行っている中で、このたびのスターバックスの「紙ストロー廃止」の発表だけが目立ち、話題になったのはなぜだろう?

理由としては、下記のことが考えられる。

1.スターバックスが環境配慮企業として先進的なイメージがあった
2.紙ストローは利用者から賛否両論の声を集めていた
3.スターバックスの取り組みは大規模で、広報活動も積極的だった

環境対策に限らず、社会貢献活動に積極的なスターバックスが、環境対策のために導入した紙ストローを廃止する――という表明を行ったことは大きなインパクトがあったと言えるだろう。

また、単なる揺り戻しではなく、バイオマス素材のプラスチックストローに変更することで、環境対策と利用者の便益のバランスを配慮している点で、批判を回避し、利用者から賞賛を得ることに成功している。

もっとも、バイオマス素材の導入は他社もやっているのだが、あまり積極的にアピールしておらず、さほど目立ってはいない様子だ。

そもそも、企業の社会問題への取り組みは、「実質的にどのくらい効果があるのか?」ということだけでなく、「トレンドに乗っているか?」ということも重視されるのだ。

消費者にガマンを強いる環境保護対策は長続きしない

2019年、欧州を起点に「フライトシェイム(Flight shame)」がトレンド化し、日本でも「飛び恥」と訳されて浸透していった。これは、CO2排出量を削減して、気候変動を阻止するために、飛行機の利用をやめて鉄道などの地上輸送に切り替える運動だが、コロナ禍で人々の異動が制限されるに従って、話題にされなくなっていった。コロナが収束した現在でも、少なくとも日本では「飛び恥」は死語に近い状況になっている。

日本は「インバウンド」と称して、外国人観光客の受け入れに熱心だが、彼らの航空輸送によって、どのくらいのCO2が排出されるのか、環境負荷はどの程度か、といった議論は、少なくとも筆者は見たことがない。

また、2019年に国連貿易開発会議(UNCTAD)は、ファッション産業が石油産業に次いで「世界で2番目に環境負荷が高い産業」という発表を行った。サステナブルファッションという言葉はいまでもよく使われているが、さすがに「衣服の生産量を大幅に削減して、既存の服を着続けたり、リユース中心に切り替えたりしよう」というところまではいかない。

2019年前後から、「人々の欲望や経済成長を犠牲にしてでも、環境対策を優先すべき」という風潮が大きくなっていった。しかし、いまはその反動が来ているといえるだろう。

スタバの紙ストロー廃止に対する人々の反応は、単純に紙ストローへの不満にとどまらず、「環境のためにガマンはしたくない」という意識の表れであるように思える。

人々にガマンを強いるような施策は長期的には成功しない。環境用語を利用すれば「サステナブルではない」というのは紛れもない事実だ。一方で、トレンドに流されることなく、「本当に環境負荷の削減に有効な対策は何なのか」ということを考えるべき時期に来ているようにも思える。

プラスチックストロー対策は、特定の業界の環境対策の一部に過ぎないが、そこから押し広げて考えるべきことは多々あるように思える。

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