濃度5%の塩水に漬けた後、冷蔵庫で冷やす
遠洋マグロ漁業の全国団体である日本かつお・まぐろ漁業協同組合(東京)は、冷凍されたマグロを解凍するには5%の塩水を使うと失敗しにくく、おいしく食べられるとPR。水産業界からも注目を集めている。
この解凍方法は、旧築地市場(東京都中央区)や、豊洲市場(江東区)で10年ほど競り人を務め、今は都内でマグロ専門の小売り店と料理店「一番星」を経営する高川航さんが考案した。
冷凍マグロのサクを軽く水で洗って水分を拭き取ってから、1~2サクの場合、塩分濃度5%にした2リットルの塩水(塩は約100グラム)の中に入れ、芯まで解凍させる。長時間浸けるわけではなく、夏場なら10分ほど、冬場なら30分程度が目安。
ポイントは、少々多めに感じる塩の量。「解凍と同時に浸透圧の作用で余分な水分を出すのが大事。塩分が少ないと十分に脱水できず、水っぽくなってしまう」と高川さん。サクを曲げてみて、柔らかくなったことを確認できれば解凍OK。
塩水から取り出してキッチンペーパーなどで十分水分を拭き取ってから、刺し身用のサイズに切り分ける。その後、ラップして冷蔵後で10分ほど冷やすと、しっとりとして食感で一層うま味が出るという。
「雨が降ると解凍に失敗する」築地での経験が生んだ
高川さんによると、この解凍法は、「マグロ以外にもさまざまな冷凍魚に活用できる。メカジキやギンタラなどで試すと臭みが消え、魚の味をしっかり感じられる」と話す。
なぜ5%の塩水解凍法を考案したのか。きっかけになったのは、「築地市場時代、濾過した海水混じりの河川水を使用してマグロを解凍していたが、雨が降ると塩分濃度が下がってうまく解凍できないことがあった。そのため、塩分濃度はどれくらいがいいのか、試行錯誤した」という。築地・豊洲市場の競り人としての経験から導き出された、まさにプロおすすめの解凍法だ。
マグロ団体も組織を挙げて推奨する5%の塩水解凍法について、専門家は「5%の塩水を使うのはマグロの解凍に適しており、うま味の元であるアミノ酸の排出も抑えられる。解凍時に若干の塩分がマグロに足されるのが嫌な人は、数パーセントの砂糖を加えるのもいい」(元神奈川県水産技術センター主任研究員)とお墨付きを与えており、理にかなった解凍法といえそうだ。