企業の会計不正が露呈するタイミングとは?

企業の会計不正が露呈するのは、ほとんどの場合、銀行など金融機関の融資姿勢が変化したタイミングである。

政府は20年、コロナ危機への緊急対策として、実質無利子・無担保で融資を行う、「ゼロゼロ融資」と呼ばれる支援策を実施した。支援策はパニック的な倒産を回避するという点で一定の役割を果たしたものの、経営が行き詰まっている企業を抜本的に救済するための仕組みではない。

企業の中にはゼロゼロ融資の返済がスムーズにできず、金融機関に対して返済猶予などを申し入れるところも出てきた。そうなった場合、銀行側は当該企業の経営状況について、改めて審査を行うことになり、その過程で粉飾決算の事例が表面化する。

こうした動きに拍車をかけそうなのが、日銀による金融正常化である。日銀が利上げを実施したことで、企業に対する貸付金利にも変化が生じている。東京商工リサーチの調査によると、46.3%の企業が既に金利が上がったと回答している。

金融機関による融資条件の変更は、支店長や担当行員の異動などをきっかけに通告されることが多く、場合によっては再審査が行われる。今までは審査対象になっていなかった項目もチェックされることになるので、粉飾が表面化しやすい。

倒産数の増加は本当に悪いことなのか

一般的に倒産数の増加は問題とされるが、一定数の企業が新陳代謝によって交代することは市場メカニズムが健全に機能している証左であり、倒産が少ない状態というのは問題が先送りされていることの裏返しでもある。経営に行き詰まった企業が倒産し、優良企業がその従業員や営業基盤を引き継ぐことは生産性の向上と賃上げにつながる。

幸いなことに今は空前の人手不足であり、企業倒産が増えても失業率が急増するリスクは少ない。粉飾倒産の増加と銀行の融資姿勢の変化は、来るべき時が来たというサインと捉えるべきだろう。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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