半導体業界は分業が進んでいる

【後藤】なぜここまで半導体が騒がれているのでしょうか? ここで半導体そのものの説明もしておきましょう。

簡単に説明するなら、半導体は電子機器の「頭脳」といえます。パソコン・スマホはもとより、自動車やあらゆるデジタル家電に組み込まれています(図表3)。加えて、近年では先ほども触れたように、AI用のデータセンターでも重要な役割を果たしています。

半導体は読んで字のごとく、「半」分だけ、電気を「導」く素材のこと。鉄や銅は電気をよく通すので「導体」、ゴムやガラスは電気を通さないので「絶縁体」です。

半導体はその中間に位置づけられます。ある条件では電気を通し、別の条件では電気を通しません。この半導体ならではの特性が電子情報の処理や保存に役立つわけです。

半導体を取り巻くのは急速に進化し続ける、複雑な工程です。そのため、1社が設計から製造までフルラインナップで行うのは大きなコストとリスクを伴います。大まかに分けると、「設計・開発」「半導体製造」「製造装置メーカー」で分業が進んでいます。以下に代表的な企業をまとめました。

●設計・開発:エヌビディア、アップル、AMD、ブロードコム、サムスン、インテルなど
●製造:TSMC、サムスン、インテルなど
●製造装置メーカー:ASML、アプライド・マテリアルズ、ラムリサーチ、東京エレクトロン、レーザーテックなど

すでに堀江さんが解説してくれたように、エヌビディアは工場を持たないファブレス企業です。自ら設計・開発したGPUの製造は、主に台湾のTSMCに外注します。それにより、大きな製造設備を持たず、高度な製造に向けた研究開発を負担しなくてすむのです。

TSMCはエヌビディア以外にもアップルやソニー、あるいは任天堂といった企業を顧客に持ち、高いシェアでの半導体製造を担っています。顧客の層が多様であるため、需要の波が分散されます。また、「規模の経済」により大規模な投資や研究開発拠点の集約ができます。