自問自答がとまらない

おかしなことに、俺たち人間が、最大限の努力が求められるのに何の見返りも約束されない、一番厳しい目標や夢を「めざそう」と思い立つのは、快適ゾーンにいる時だ。

コストマン(今走っているレースの走破を「出場条件」に挙げた、さらに過酷なレースの主催者)にこの挑戦を突きつけられた時も、俺は軍の職場にいた。ぬるいシャワーを浴びたばかりで、食事も水も足りていた。快適だった。そして振り返ってみると、俺が困難な挑戦にとりつかれた時は、いつも生ぬるい環境にいたんだ。ソファでくつろいでレモネードやチョコレートシェイクを飲んでいる時は、何でもできそうな「万能感」がある。

快適ゾーンにいる時は、戦いの最中に必ず頭をよぎる素朴な疑問に答えられない。いや、そんな疑問がよぎることも想像できない。

でも、エアコンの効いた部屋にいない時、ふわふわの毛布にくるまっていない時は、こうした疑問に「答えられるかどうか」がカギを握る。ズタボロの体で猛烈な痛みに襲われながら、経験したことのない世界に足を踏み入れようとしていると、頭がクラクラして、疑問に押し潰されそうになる。

神に祈る男
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心の準備をしないまま、熾烈な状況に投げ込まれ(しかもそれは自分で選んだ状況なんだ)、思考をコントロールできない時に頭に浮かぶのは、苦しみをできるだけ早く止めようとする答えだ。

「わからねえよ!」

「なぜまだ自分をこんなに痛めつけるんだ」

ヘルウィーク(編註 米海軍特殊部隊での地獄のように厳しい130時間連続で続く訓練)は俺のすべてを変えた。俺がこの24時間レースの直前に出場を決めたのも、ヘルウィークを乗り越えた自信があったからだ。ヘルウィークでは、それまでの人生のすべての感情とすべての浮き沈みを、たった6日間で追体験する。あの130時間で、数十年分の知恵が身につく。

ヘルウィークを3度(!)経験し、2度乗り越えた俺は、それを骨の髄まで理解していた。ヘルウィークは俺のふるさとだ。そこはこの世で一番フェアな場所だ。時間制限つきの強化訓練もなく、表彰式も、トロフィーもない。ヘルウィークは俺自身との全面戦争だった。そして、ホスピタリティ・ポイント(レース会場)でどん底に突き落とされた俺がいたのも、同じ「フェアな」場所だった。

なぜだ? なぜまだ自分をこんなに痛めつけるんだ、ゴギンズ⁉

「おまえがクソヤバいやつだからだよ‼」と俺は叫んだ。