北陸の医師だった父親には「外の顔」「内の顔」があった

とはいえ、男性には外の顔と内の顔があるものです。開業医だった父の外の顔はすばらしい職人でした。葬儀に参列してくださった患者さんから聞いたのですが、父は皆さんの体調を熟知しており、診療も対応も非常にきめ細やかだったそうです。父が患者さんからどれほど信頼されていたか、そのとき初めて知りました。

一方、内の顔は先ほどお話しした通り。加えて、兄・私・弟の3兄弟に対しても、息子と娘では接し方がまったく違いました。

あるとき、父は兄と弟に「大きくなったら何になる?」と問いかけました。ワンマンな人ですから自由な答えは許されません。父は兄には建築家に、弟にはエンジニアになるようにと言い聞かせました。ところが私の順番が回ってこなかったので、自分から「私は何になるの?」とたずねたんです。すると父は、そこにいたのかという顔をして、「ちこちゃんはいいお嫁さんになるんだよ」と言いました。