日本のトップ投手と比較しても少ない
NPBのトップクラスの投手は、シーズン2500球以上の球数を投げる。
佐々木が一軍デビューを果たした2021年以降の、パ・リーグ投手の最多投球数と、佐々木の投球数を比較しよう(図表1)。
かつて、NPBのエース級は優に3000球は投げていたのだが、近年、球数は減少傾向にある。しかし佐々木は3000球どころか2000球を投げたシーズンもない。
2023年オフ、佐々木朗希にはMLB挑戦を目指し、広告代理店やマネジメントする人が就いたと報道された。そして2024年は、シーズンを通して活躍して、メジャーでも通用する投手であることを証明し、オフにポスティングで移籍を目指す、という佐々木の決意も報じられた。
今季の佐々木は、完全試合を記録した2022年に比べて、フォームが小さくなり、左足もそれほど高く上げなくなった。最高球速も今季は時速158キロ。昨年はNPBタイの時速165キロを記録していたから、明らかに「安全運転」を意識しているように見えた。
そして規定投球回数をクリアすることを目指していたのだろうが、それでも故障、不調の時期があって、キャリアハイの10勝は記録したものの、投球回数は111回に終わった。
時期尚早という評価は妥当だが…
まだ佐々木は、NPBでさえもシーズン通して活躍できると証明できていないといえよう。
ちなみにMLBの今季、最多投球数はジャイアンツのローガン・ウェブの3201球(204.2回)、3000球以上投げた投手が10人いる。ブルージェイズからアストロズに移籍した菊池雄星も2923球を投げている。
もちろん、佐々木朗希のポスティング移籍は「マイナー契約」を前提としたものであり、いきなり3000球を投げることを求められるわけではない。
当初は登板間隔、投球数を調整しながら投げて、徐々に球数を増やしていくことにはなろう。
しかし本来、メジャーに移籍する選手にとってNPBでの登板は、メジャーで通用する技術、能力、体力を身に付けるための「育成期間」でもあったはずだ。
佐々木の場合、メジャーで通用する能力があると十分に証明しないまま、ポスティング移籍するという印象は否めない。時期尚早というところではないか。
しかしながら佐々木朗希自身は、大事に育成されすぎたあまり、ここまでの人生で「一度もチャレンジしていない」という気持ちがあるはずだ。