佐々木にとってロッテは最高のチーム

10月のドラフト会議では、佐々木は「ドラフトの目玉」となり西武、楽天、日本ハム、ロッテとパ・リーグの4球団が指名する中、ロッテが指名権を引き当てた。

筆者はこの時、最高のチームに入ったと思った。ロッテはこの年から吉井理人投手コーチ(現監督)が就任していたが、吉井コーチは、筑波大学大学院の川村卓教授(当時准教授)のもとでコーチングなどを学んでいた。甲子園出場経験もある川村教授は同時に筑波大学野球部の監督でもある。大船渡高校の國保監督は、筑波大野球部出身で、川村教授の教え子だったのだ。

ZOZOマリンスタジアム
ZOZOマリンスタジアム(写真=Stantonharuka/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

逸材、佐々木朗希は引き続き「筑波人脈」の中で育成されることになった。吉井コーチはおそらく、他の指導者のように佐々木に無理な投げ込みはさせないだろうし、彼の肘や肉体の状況を十分にチェックして、プロのレベルに順化させていくだろうと思った。

果たして、2020年、1年目の佐々木は1軍でもファームでも試合のマウンドに上がることなく、体力強化とコンディションの維持に努めた。

翌年の沖縄、石垣島の春季キャンプでは、他の投手に混じって佐々木はブルペンで力強い球を投げ込んでいた。

シーズン通して一軍選手だったことがない

しかしこの時期にはファンの中にはストレスを感じる人も多かったようで、ツアーでキャンプ地を訪れた老人は、取材パスをぶら下げた筆者を関係者と思ったのか、「なぜ佐々木を投げさせないんだ。甘やかすとろくなことにならんぞ」と険しい表情で言った。

2021年から先発投手として一軍の試合で投げ始めた佐々木は、2022年4月10日のオリックス戦で、1994年の巨人、槙原寛己以来史上16人目となる「完全試合」を達成。さらに次回の日本ハム戦でも8回までパーフェクト。異次元の活躍をし始める。

佐々木は優に100マイル(時速約161キロ)を超える速球を投げることができるだけでなく、落差、変化量が大きいフォークも武器だ。そして何より、ダイナミックなフォームながら、制球力が抜群で、ほとんど四球を出さない。いわば、投手として備えるべき「美質」をすべて持ち合わせていると言っても良かった。

しかしながら、佐々木は同時に万全なコンディションを維持することが難しい投手でもあった。

はじめて公式戦のマウンドに立った2021年は9回登録抹消されている。2022年は5回、2023年は2回と徐々にその回数は減っていったが、2024年は4回登録抹消された。

つまり過去5年、シーズン通して1軍選手だったことがなかったのだ。