円安により輸入牛肉の仕入れ価格が大幅に上昇
2024年、焼肉店の倒産件数が過去最多になっています。帝国データバンクの「『焼肉店』の倒産動向(2024年1~9月)」によると、2024年に発生した焼肉店経営事業者の倒産は2023年から倍増し、過去最多を更新しているのです。
背景には、円安による輸入牛肉の価格高騰、光熱費や人件費の増加があり、特に個人経営の焼肉店が深刻な影響を受けています。焼肉業界は輸入牛肉への依存度が高く、特にアメリカやオーストラリアからの輸入肉が焼肉店で多く使用されています。しかし、2022年からの急激な円安によって、輸入牛肉の仕入れ価格は大幅に上昇しました。為替が1ドルあたり110円台から150円台へと急変し、この変動が焼肉店の仕入れコストに直接影響を与えています。
こうした経済的背景の変化に対し、焼肉店の経営者は厳しい対応を迫られています。従来の価格での経営が難しくなったことで、仕入れ価格の上昇をメニュー価格に反映させざるを得ません。しかし、焼肉業界は特に価格競争が激しいため、安易な値上げが売上に直結するリスクも伴います。個人経営の焼肉店は、大手チェーン店と異なり、価格を上げることで客足が遠のくリスクが高く、価格転嫁が難しい立場にあります。
夜営業が中心の焼肉店ではスタッフ確保が困難
さらに、円安や物価高騰に加え、光熱費の負担増も焼肉店の経営に大きな打撃を与えています。焼肉店は炭火やガスコンロを使った高温での調理を行うため、一般の飲食店と比較して光熱費の負担が大きくなります。電力価格やガス価格が2022年に急激に上昇したことにより、店舗の光熱費が経営を圧迫しています。エネルギーコストが予測不能なレベルで上昇する中、利益を確保するために運営効率の見直しを進める店舗も増えているものの、根本的な光熱費削減が難しいため、こうした状況に対応するのは非常に困難です。
また、人件費の負担増も、焼肉店の経営を難しくしている要因です。コロナ禍を経て、飲食業界では人手不足が深刻化し、特に夜営業が中心の焼肉店ではスタッフ確保が難しくなっています。こうした人材不足の状況下で、スタッフの賃金を上げないと求人が集まらないため、結果的に人件費が増加しています。特に深夜勤務や高温調理を伴う業態では、賃金の割増が必須であり、これが経営にとって大きな負担となっています。加えて全体的な賃上げの空気も再度高まっており、経営にとってはさらなる影響を与えていると言えます。
このように、焼肉店が抱える経営問題は多岐にわたっており、経済環境の変化によってその影響は加速しています。輸入牛肉の価格高騰や光熱費、人件費の増加といったコスト増により、倒産件数が過去最多となることは、避けがたい結果だったと言えるでしょう。特に円安による仕入れコスト増は、日常的な経営努力では簡単に解消できない問題であり、今後も同様の経済環境が続くと見込まれる中で、焼肉店の経営環境はますます厳しくなっていくでしょう。