インテリ役がドはまりだった「お昼の顔」

7位 昭和初期が似合う一方、令和の空気が求める繊細さ 岩井勇気(ハライチ)

「江戸川乱歩短編集 満島ひかり×江戸川乱歩」(NHK BSP)で鮮烈な印象を残したのが「算盤が恋を語る話」の岩井だ。隣の席の女性(満島ひかり)に算盤で愛の告白を試みる男の役。特殊な作品だが洒落た雰囲気がぴったりで、外連味のなさがよかった。

また、「今ここにある危機とぼくの好感度について」(NHK)では主役・松坂桃李の友人で准教授の役で登場。大学が舞台で、イマドキの大学のセンセイっぽさがしっくり。落合陽一のイメージかな。インテリ役を所望します。

6位 え?生きてる?気配を消せる特殊能力 水川かたまり(空気階段)

「妻、小学生になる。」(TBS)では中学生女子に憑依する霊の役、「罠の戦争」(フジ)では議員会館で神出鬼没の事務員・小鹿役。実は芸人と知らずに観ていたので、てっきり役者だと思い込んでいた。気配を消せるほど存在感の薄さは逆に武器になると思っていたら、映画初主演が決定したそうで。その名も『死に損なった男』。タイトルになるほど、と唸ってしまったよ。監督・脚本は『メランコリック』の田中征爾なので、面白くないはずがない。

盤石の演技力と安心感の男性芸人5傑(ランク外)

ちと細かすぎたのでランキングからちょいと横道へ逸れる。横道というか王道を。キャリアを積み、盤石の立ち位置を掴んだ手練れ5傑に触れておこう。

① 性別の特性を超越、全人類対応可能の主演級 塚地武雅(ドランクドラゴン)

どこもかしこも丸みのある外見のアドバンテージを活かした役に始まり、さらに性別も超えてきた。主演作「パパがも一度恋をした」(フジ)では亡き妻の魂が乗り移ったおっさんを好演し、「新宿野戦病院」(フジ)での看護師長役は記憶に新しいところだ。

ドランクドラゴン・塚地武雅。出演した映画『間宮兄弟』では、キネマ旬報、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールの三冠映画賞新人賞を受賞している。
画像提供=プロダクション人力舎
ドランクドラゴン・塚地武雅さん。出演した映画『間宮兄弟』では、キネマ旬報、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールの三冠映画賞新人賞を受賞している。

もちろんコントでも女性役をよく演じていたが、「こういうおばちゃんおるな」と思わせる動きが秀逸。声音でなく口調で中年女を再現できるのだ。「母に心配される独身中年息子」役もしっくり。とにかく体も芸も幅が広い!

② 顔と声の独創性が無二 平凡を平凡にしない今野浩喜

つい指で押したくなる特徴的な鼻、ひねりのある声、斜に構えた小心者役といえば今野。軍曹や上昇志向の強い学者など嫌味で威圧的な役が多く、最近では医師や刑事の役もこなす。

個人的には、戦にいやいや駆り出される農民(「真田丸」NHK)とか、賢いのに手癖が悪くてムショに入った(「極道めし」BSジャパン)矮小な今野が好きだ。

民の憂いと愚痴と怒りを内包した役を託したいし、日本の歴史上どこにいても違和感のない「世紀超越俳優」として活躍し続けてほしい。