「現代語」の理解に役立つ

このように、古文の勉強が現代の言葉にも役に立つことはたくさんあるのです。古文の勉強をしていれば、現代語の意味もよく理解できるようになるのです。

例えば、次の文を読んでみてください。これはどういう意味でしょうか?

「どうか、この問題を解いてくれ」
「えっ⁉ 頭のいい彼女でさえ解けなかった問題なのに!」

一見すると普通の文ですが、ちゃんと意味を理解しようとすると、実は少し複雑なことがわかります。まず最低限、「この問題は、彼女は解くことができなかった」ということはわかります。「彼女=頭がいい」ということもわかります。でも、この文はそれ以上の意味が含まれています。

「さえ」という表現に注目です。これは、古文の世界では「だに」という副助詞が現代にまで残っている表現です。今でも、「予想だにしなかった出来事だ」なんて言いますよね。この「予想だに」の「だに」です。

教室で勉強している高校生
写真=iStock.com/Xavier Arnau
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古文の表現は現代まで残っている

さて、この「だに」は、古文のテストだと結構難しい文法項目として出題されます。例えば、次のような問題が出題されたとします。

「蛍ばかりの光だになし」を詳しく現代語訳せよ。

このとき、「蛍ほどの光さえなかった」と訳すだけだと、点数が取れない場合があるのです。正しくは「蛍ほどの光さえなかった。まして、それより大きい光はなかった」という意味になります。

古文において「AだにB」は、「AでさえBだ。まして、CならなおさらBだ」という表現になります。

「だに」とつけるだけで、短く「まして、CならなおさらBだ」という裏側の意味を追加することができる便利な表現であり、古典文学を読んでいるとよく使われる表現です。そして、この「だに」が現代まで残った形である「さえ」も、同じような意味があります。

「頭のいい彼女でさえ解けなかった問題」と言うのは、先ほどの「まして、CならなおさらBだ」と言う意味が隠されており、「まして、彼女より頭が良くない私ならなおさら解けないに決まっている」という意味だとわかります。

古文の勉強をしている人なら、現代語の意味が深く理解できるわけです。

「なんでこんな『だに』なんて勉強しなきゃならないんだよ」と思っていたかもしれませんが、これは、現代まで残る表現をきちんと知るために必要なのです。