手取り月収は60万円近くなのに、毎月5000円しか残らない
キャッシュレス化が加速し、各自治体も「コード決済を使えばポイント○%還元」といった施策を次々と打ち出しています。こうしたキャンペーンのたびに、対象となるコード決済アプリをインストールしていては、「キャッシュレス貧乏」になりかねません。これから話す武田家の家計がその一例です。
先日、家計相談に来た首都圏在住の武田ユウジさん・キヨミさん(仮名)夫婦はともに30代半ばの正社員。小2の長男がいる3人家族です。世帯月収は手取り58万円ですが、月の支出は、家賃15万円を含む57万5000円で、毎月残るのは5000円程度。貯蓄残高は500万円です。
「家計は赤字ではないんですが、手取りで月58万円もらっているからもっと貯められるはずなんですよね……」と、妻のキヨミさん。
手取り月収58万円なら、額面では世帯年収は約1000万円なので、確かにもっと貯蓄に回せる余地はありそうです。
キャッシュレス派になってから家計運がダダ下がり
実は武田さん夫婦が家計相談で来所したのは、今回で2回目。1回目は約9年前で、「これから結婚するにあたり、家計管理のルールを決めたい」という相談内容でした。
当時決まった武田家の家計ルールは、「変動費は、夫婦それぞれ一定額を“生活用の財布”である銀行口座に入れ、そこから随時引き出す」というもの。アナログ派の二人は、クレジットカードは持たず、現金支払い、または口座引き落としという形で続けていました。
ところが、コロナ禍を機に、4年ほど前からキャッシュレス決済を始めるように。そこから、家計の歯車が狂い出してきたのです。
「クレジットカードだと使うたびに0.5%のポイントが付与、QRコード決済にすれば、キャンペーン中だと10%、20%もポイント還元されることもあると聞いて、“これはやらなきゃ損”と思ったのが運の尽き。各種支払いアプリがキャンペーンを打ち出すたびに、そのアプリをインストールして、いろんな決済アプリを使うようになったんです。
そのコード決済も、クレジットカードからオートチャージすればポイント還元率がさらに増えるというので、オートチャージ設定に。そうしたら、知らぬ間にどんどんチャージされていきました。また、買い物する場所によってポイント還元率が上がるクレジットカードもあると聞いて、作ったこともあります」(キヨミさん)
かくして、多いときはクレジットカードが3枚、コード決済アプリを4つ、計7つのキャッシュレスを使い分けるようになったと言います。
「そのうち、クレジットカードは毎月メールで送られてくる『支払い金額』しか見なくなりました。アプリに関しては、使うたびにメールで明細が来るものの、その数が多すぎてチェックしきれない。
これまでは、共有口座の残高さえ見ていれば、その月にいくら使って、残高はこれしかない、ということが一目瞭然だったんですが、これだけ支払い方法が多岐にわたると、いつどこで何に使ったのかがさっぱり分からない。アプリも絞りたいけど、もはや何にどう絞ったらいいのか…」(キヨミさん)
収集がつかなくなり、頭を抱え、来所に至ったというわけです。