タレント議員にハックされる日本政治
毎回選挙に出馬するタレント議員も、相変わらず減ることはありません。しかし、彼らがいったい、何をどこまでわかっているのか。
僕は以前、あるテレビ番組で、自民党から衆議院選挙に出馬した元タレントに会う機会がありました。「政治家として、これを実現させたいというものはあったのですか」という質問をしてみたところ、「来ましたね」と明らかな警戒モード。
「地域のためだったり、みんなのためだったり、社会の一員として働いていきたいという気持ちがあったので挑戦させてもらっています」と言う彼女に、「具体的に政治家じゃないとできないことはあったのですか」と突っ込んでみても、まったく期待した回答は得られないままでした。
なんでも、タレント時代にロケであちこち行ったことから、「日本が大好きで、日本がよくなったらいいなと思った」そうです。
「いろいろありますね」
「たとえばでいいですが、具体的にお願いします」
「自給自足を目指したらいいのでは」
それではと、彼女が言う自給自足について聞いても、食糧自給率がどういう指標なのかも理解していない様子でした。このように、今や日本の選挙は、大政党が擁立するまったく政治をわかっていない人たちや、汚いことをやって有名になり票を得ようとする人たちにハックされてしまっているのです。
その結果、本気で日本の未来を考えている人たちにとって、選挙に行ってみたところで票を投じたい政治家も政党もない、という事態が起きています。
白票を投じても意味がない
こうした現実に対抗するため、「白票を投じるという形で意思表示をしよう」という動きがありますが、僕は反対です。
選挙で白票や無効票を投じると、計算上、多数派に投票したのと同じ結果になります。たとえば、ある選挙で、A候補に5票、B候補に3票、白票が6票入っていたとします。一番多いのは「白票=誰にも投票したくない」ですが、結果はA候補が当選します。白票は選挙の結果に影響を及ぼさないため、多数派への信任と同じ意味を持つのです。
それどころか、これまで選挙に行かなかった若者が白票を投じれば、「若者が選挙に来てくれても勝った。だから、このまま進もう」と自民党は解釈するはずです。つまり、かえって悪い方向に行ってしまいます。
しかしながら、どれほど嘆いてみても、今の日本の有様は国民の多数派が選んだ結果なのです。これは、誰が首相になっても変わりません。