ドーパミンは興奮と抑制、双方に働く

それでは、脳内のホルモンのうち問題行動の引き金とされ、特に注目されているドーパミン、セロトニン、GABAについて見ていきましょう。

① ドーパミン

ドーパミンは、脳内で興奮系と抑制系双方に働くことが知られています。脳内にはドーパミンD1受容体とドーパミンD2受容体という2種類のドーパミン受容体が存在し、それぞれがドーパミンの調節を行っています。これらの受容体の量が少なくなると、ドーパミンの調節がうまく行かなくなり、子どもたちの問題行動につながります。

ドーパミンD1受容体は、注意力や衝動抑制、行動の計画に関わります。栄養素が不足すると、この領域のドーパミン伝達が異常をきたし、結果として興奮が制御できなくなることがあります。また、ドーパミンD1受容体は、報酬や快楽に関わる神経回路(特に中脳辺縁系)に存在し、特定の刺激に対する反応を増幅します。

栄養不足がこの受容体の機能を低下させると、報酬系の調整ができず、過度な刺激を求める異常行動が引き起こされる可能性があります。

衝動的な行動や感情の爆発につながる

一方でD2受容体は、神経細胞が過剰に興奮しないようにするためのメカニズムで、過剰なドーパミン放出を防ぎ、バランスを保つ働きをしています。これにより、感情や衝動の過剰な反応を防ぎ、行動を安定化させる役割を果たします。

栄養素が不足して、ドーパミンD2受容体が少ないと、ドーパミンの放出が過剰になり瞬間的な報酬や快楽を強く求める行動が増え、これが衝動的な行動や感情の爆発(暴力的な行動、キレやすさなど)につながります。例えば、瞬間的な快楽を求めて、他人を傷つける(暴力的行動)や、自分の欲求が満たされないとすぐに感情を爆発させる(キレやすい)といった行動が見られます。

また、D2受容体は、注意力や集中力の維持にも関与しています。これが不足すると、注意力が散漫になりやすく、感情的な刺激に過敏に反応するようになります。たとえば、教室などでじっと座っていられなかったり、突発的に友達に暴力を振るってしまうなどの行動が起こりやすくなります。