グローバル人材に求められる中身が大きく変わってきている。

住友商事元会長 
加藤 進氏

総合商社のビジネスは、日本の輸出・輸入の先兵として海外の顧客と日本企業の橋渡しをする役割から、例えば新興国での発電所の建設と電力の販売まで含めたインフラ事業など、複雑なビジネスにシフトしてきている。プロジェクトの規模が大きくなり、スキームの範囲が広がっているのだ。

世界では地球規模での産業構造の変化に加えて、経済成長が先進国から新興国にシフトする、いわば地軸の変化が起きている。そこで求められるグローバル人材とは、総合力を有し、国境を越える人材である。

電力事業関連のプロジェクトなど、大規模なインフラビジネスは商社単体で行えるものではない。機器のサプライヤーや建設会社、ファイナンサー、事業をオペレートする電力会社など、様々な企業と提携しプロジェクトをまとめあげていく。あらゆるパートナー企業を巻き込んでいく力が必要となるのだ。それが会社や組織の枠を超え、ビジネスをまとめる、真の総合力といえるだろう。

国境を越える人材とは、1地域のみを長く経験し、その地域だけに精通した人材ではない。例えばアメリカ、東南アジア、中東など多様な国・地域のビジネス文化に熟知し、うまく組み合わせて仕事をつくる人材である。幅広い知識と経験が、従来以上に求められているのだ。

こうした人材を輩出するには部門間、あるいは本社、事業会社の垣根を越えた、ローテーションによる育成が不可欠だ。いろいろな経験を積むことで人は成長する。国・地域を超えた様々な事業領域の現場で自らチャレンジする機会を与えることが、グローバル人材を育てるのだ。

当社では、入社時からコーポレート部門を含め、様々な業務を経験させるために部門を超えたローテーションを実施している。事業部門を超えた異動を行う際には、優秀な人材ほど外に出したくないという部門や事業間のエゴが働く。そのエゴを優先すると、幅広い視野を持つグローバルリーダーは育たない。