失敗したときこそ、本気で見つめなければならない

「失敗したときは、……本当にはっきりと失敗したんだなと思ったときは……。それを破き去ったり、つぶしたりしてはいけない。それをじっと見る。じっと見据える。本気になって、勇気と力をこめて見る」(『旅でもらったその一言』渡辺文雄、岩波現代文庫)

中川は陶芸や絵画にたとえて失敗を見つめろと言っている。しかし、これはトヨタの現場で河合が上司から諭されたことと同じだ。うまくいかなかった仕事について、トヨタ、学園では真正面から見つめろと教える。

いわゆる教育施設とはいかに失敗しないで生きていくかを教えるところだ。しかし、どう教育しても、万全の準備をしても、人は必ず失敗する。

どれほど立派な教えを学び、テストで100点を取っても、学校で首席になっても、人は失敗する。社会に出ていって、仕事をして、「失敗したことはありません」とうそぶいたとしても、必ず失敗する。そして、大半の人は失敗の経験をなくそうとする。自分の失敗を思い出したくないし、見つめたくないからだ。だが、トヨタと学園では失敗だと自覚した時は本気になって、勇気と力をもって見つめることを教えている。こういった会社、教育施設は他にない。

【関連記事】
【第1回】なぜトヨタ社員は「世界一のクルマ」を作れるのか…エリート技術者250人を育てる「トヨタ工業学園」の秘密
「三菱商事"採用大学"ランキング」を見れば一目瞭然…学歴社会・日本で成功に必要な「出身大学の最低ライン」【2024上半期BEST5】
「三菱商事、伊藤忠、ゴールドマン・サックス」がずらり…偏差値55なのに就職実績"最強"の「地方マイナー大学」の秘密
豊田章男会長の「信任率急落」の衝撃…トヨタ業績絶好調でも株主の3割がノーを突きつけた本当の理由
小中学校9年間、1日も通学しなかった…藝大卒の作曲家が6歳で「絶対に学校には行かない」と決心した"大事件"