失敗したときこそ、本気で見つめなければならない
「失敗したときは、……本当にはっきりと失敗したんだなと思ったときは……。それを破き去ったり、つぶしたりしてはいけない。それをじっと見る。じっと見据える。本気になって、勇気と力をこめて見る」(『旅でもらったその一言』渡辺文雄、岩波現代文庫)
中川は陶芸や絵画にたとえて失敗を見つめろと言っている。しかし、これはトヨタの現場で河合が上司から諭されたことと同じだ。うまくいかなかった仕事について、トヨタ、学園では真正面から見つめろと教える。
いわゆる教育施設とはいかに失敗しないで生きていくかを教えるところだ。しかし、どう教育しても、万全の準備をしても、人は必ず失敗する。
どれほど立派な教えを学び、テストで100点を取っても、学校で首席になっても、人は失敗する。社会に出ていって、仕事をして、「失敗したことはありません」とうそぶいたとしても、必ず失敗する。そして、大半の人は失敗の経験をなくそうとする。自分の失敗を思い出したくないし、見つめたくないからだ。だが、トヨタと学園では失敗だと自覚した時は本気になって、勇気と力をもって見つめることを教えている。こういった会社、教育施設は他にない。