転職、副業でそう都合よく収入は上がらない
もちろん、投資をしなければならない理由はインフレだけではありません。少子高齢化が進むなかで将来的には年金の受給額もいまより減る可能性が高いでしょう。転職や副業で収入を上げるという手段もありますが、それはあくまでも理想論というのがわたしの見方です。
実際、わたしも転職を何度か経験していますが、そこまで都合よく給料は上がりませんし、上がったとしてもその分仕事がきつくなるということもあります。副業をはじめたことで本業がおろそかになり、どちらに自分のリソースを割くべきかわからなくなるということもあるでしょう。
収入を上げるというのは、多くの人が思っているほど簡単ではないのです。だからこそ、「新NISA」がはじまったことで投資に興味を持つ人が増えているというのは、タイミング的にもとてもよかったと思います。
全くの無知のまま新NISAを始めるのは危険
【澤円】一般の日本人が投資という資産形成法について興味を持ちはじめた状況を、森永さんも歓迎しているということですね。一方で、現在の投資をめぐる状況に問題点はありませんか?
【森永康平】SNS全盛のなか、いわゆるインフルエンサーと呼ばれる人たちが「絶対に新NISAをはじめないと駄目」と喧伝していたり、政府も投資をすすめていたりする結果、いままで投資に興味を持っていなかった人たちが知識不足のままいきなり投資をはじめるということが起きています。
わたしも職業柄、「新NISAって絶対に損しないんですよね?」といった質問を受けることがあります。「だってこれだけ国が推しているのだから、損なんてするわけがない」と本気で思っている人もいるのです。もちろん、大半の人は勉強をしてからはじめようと考えるのですが、無知のまま投資をはじめる人も少なくないことは危険だと感じています。
【澤円】なにをはじめるにも、一定の勉強が必要ということですね。特に投資となると、資産を失うリスクもあるのですからなおさらです。
【森永康平】もちろん、「ちゃんと勉強をしてから」と考え過ぎるといつまで経ってもはじめないということにもなりかねませんから、勢いではじめるのもありかもしれません。とはいえ、大切なお金を投じる以上、ある程度の知識をつけてはじめたほうが、後悔する確率は減りますよね。