「オフィス北野」を退社して

【長谷川晶一】玉袋さんは、長年所属したオフィス北野(現・株式会社TAP)を2020年に離れて個人事務所を立ち上げました。一般のビジネスパーソンの場合だと、「会社を辞めて看板や肩書がなくなった途端に人が離れていった」といった話もよくありますが、玉袋さんの場合は安定して仕事が続いていますよね。

【玉袋筋太郎】もちろん、最初からそうした絵を描いていたわけじゃないけれど、結果的に協力してくれる人がたくさんいたということは本当に嬉しかった。だって、完全に後ろ盾がなくなったんだもん。いまはそういうことも減ってはきているんだけど、やっぱり芸能界という場所は、後ろ盾があれば仕事が途絶えないことも実際問題としてあるわけよ。

でも、俺にはその後ろ盾が完全になくなってしまった。オフィス北野に所属していた時代に俺がやっていた仕事は、あくまでも事務所経由で成立していたものばかりだから、事務所から離れるということは、それまでの契約を各放送局が見直すことを意味していた。

当然、「これはもう続いていた仕事もなくなるな」「すべての仕事が一からやり直しになるな」と腹を括っていたわけだけど、実際は大丈夫だった。ある放送局の上層部の人にことの経緯と状況を説明したら、「わたしたちは事務所と付き合っていたわけじゃなく、玉さん個人と仕事をしてきました」といってくれたんだよね。もうさ、その言葉にはしびれちゃったよ。

「会社が倒産した後の自分」をイメージしておく

【長谷川晶一】そこに関連したことでいくと、一般の人の場合、「会社以外の人脈をつくれ」ということもよくいわれることです。

【玉袋筋太郎】いわゆる「会社人間」としてがむしゃらに生きてきた人が、会社の倒産や不祥事などトラブルに巻き込まれて、その地位や肩書を失ってしまうこともあるよね。そのとき、会社以外の人間関係のなかで、果たしてどれだけの人が自分の味方になってくれるのか? そうしたことは、いつも頭の片隅に置いておいたほうがいいかもしれないよ。