体に栄養を運び、精神を安定させる「血」が不足しています

どうして眠りが浅くなってしまうのか、その原因はいろいろとあるのですが、一つの大きな要因としては、「けつ」の不足が考えられます。「血虚けっきょ」という状況ですね。

中医学で言う「血」は、全身に栄養を運ぶほかに、精神を安定させるという重要な役割も持っています。その「血」が不足しているわけですから、こころは不安定になるし、脳に栄養も届けられません。すると、休息を取っても、頭の栄養は不足していますから、疲労感が取れずに残ってしまう、ということになるわけです。

とくに今回の状況においては、「血虚」の中でも、「肝」という臓器の「血」が不足している、「肝血虚かんけっきょ」の可能性が高く考えられます。

中医学における五臓の「かん」という場所は、血を貯めておく貯蔵庫です。体内で「血」がつくり出されると、すべては「肝」に貯められます。そこから必要としている場所へ送り出されるという仕組みで、「肝」はいわば「血」の源泉のような場所。つまり「肝血虚」という状態は、「血」の貯蔵量が不足しているということ。脳がいくら「血」を欲していても、その脳に送り出してあげるだけの十分な「血」が体内にストックされていないわけです。

また、「肝」は全身の臓器がスムーズに働くように調整をする、空港における管制塔のような役割も持っています。筋肉の動きを指示してスムーズに肉体が動くように調整していたり、必要な臓器へ「気」や「血」を巡らせるように指示を出したりするほか、情緒などにも大きく関わっています。そのため、「肝血虚」に陥ると、この司令塔の役割にも支障が出て、正常な指示を出せなくなったり、「肝」の働きで安定していた情緒も不安定になったりします。

「肝」の働きを守るために目を養生する

中医学で「肝」は目につながると考えていて、目の酷使は「肝血かんけつ」を大量に消費しますから、一度テレビやスマホ、パソコンの使用時間を見直してみるのがよいでしょう。

仕事でどうしても必要という場合は、休日ぐらいは見ないようにするなどの工夫を。

また、女性の場合は、月経で毎月大量の「血」を失っていますから、ほうれん草、にんじん、黒豆、ごま、牛乳など、「血」になりやすい「補血ほけつ食材」を日頃から積極的に摂ることがおすすめです。