経済政策の「材料不足」が著しい
石破茂氏が102代目の首相に選ばれたのが10月1日。そのわずか8日後に国会を解散した。「新内閣が発足したら信を問う」というのが、戦後最短の解散に踏み切った「大義」だ。
自民党総裁選の論戦では「国民に判断材料を提供するのは政府・与党の責任」と語っていたが、結局、国会では代表質問と党首討論だけしか行わず、石破首相の変節ぶりに批判が集まっている。メディアからは「有権者に政権選択の材料を十分に示さないまま、解散に踏み切るのは無責任極まりない」(東京新聞・社説)といった声まで上がった。
中でも「材料不足」が著しいのが経済政策である。
自民党総裁選の1回目投票で高市早苗氏がトップになると外国為替市場では一気に円安が進み、1ドル=146円台半ばまで円が下落した。高市氏が「金融緩和は我慢して続けるべき、低金利を続けるべき」と主張していたことから、日本銀行などが目指す利上げが遠のくとの思惑が広がった。ところが石破氏が決選投票で勝利すると、市場は逆方向に動き、1ドル=143円台に急騰した。
円安に歯止めをかけるために金利を引き上げるべきだと述べていた石破氏が首相の座に就けば、日銀の金利引き上げを支援するとの見方が広がったためだった。岸田文雄内閣の経済政策は「円安容認」とも言える姿勢だったから、これを石破内閣は180度転換すると市場に見られたわけだ。
火消しに動き、これまでの自説をあっさり転換
岸田内閣の円安容認は輸入品を中心に物価上昇をもたらしたが、結果的に資産価格も大きく上昇させた。円の価値が劣化するわけだから、外国人投資家などの資金が入っている株式や不動産などは、円建てで見た価格が上昇する。結果、「円安株高」が続いてきた。これを転換するのではないか、と見られたわけだから、株価は大きく反応する。
総裁選の投開票が行われた9月27日金曜日の日経平均株価の終値は3万9829円56銭だったが、石破氏当選を受けたその日の海外市場では日経平均株価先物が大幅に下落、3万7000円台半ばになった。
こうした市場の動きに危機感を持ったのだろう。石破氏は9月29日朝のフジテレビの「日曜報道 THE PRIME」に出演。「金融緩和の方向性は維持していかなければならない」「必要であれば財政出動する」「民間需要が少ないときは財政出動しないと経済が持たない」などと述べ火消しに動いた。これまでの自説をあっさり転換してみせたわけだ。それでも翌日9月30日月曜日には株価が大幅に下落。日経平均株価は3万7919円55銭と前週末比1910円も下落した。