カジノを含むIR(統合型リゾート)の建設をめぐっては、大阪府・大阪市が夢洲地区に2030年秋ごろの開業を目指している。政府は「世界最高水準の規制」と強調するが、本当なのか。ジャーナリストの高野真吾さんは「昔から、『飲む・打つ・買う』は三点セットで語られてきた。ラスベガスやマカオでも売春婦を客に送り込む裏ビジネスが横行している」という――。

※本稿は、高野真吾『カジノ列島ニッポン』(集英社新書)の一部を再編集したものです。

大阪府庁咲洲庁舎から見た人工島・夢洲
写真=時事通信フォト
大阪府庁咲洲庁舎(大阪市住之江区)から見た人工島・夢洲(中央)=2023年9月28日、大阪府

250条もあるわりに、どんなIRになるのか見えない

カジノ列島ニッポン』(集英社新書)の第2章ではシンガポールの事例で、「IRとは何ぞや」を探ってきた。MBSやRWSの姿は、IRのイメージをつかむ一つのヒントにはなる。しかし、シンガポールと日本では当然、経済事情、文化背景、国民性、歩んできた歴史が異なる。シンガポールがシンガポール独自のIRを造っているように、日本も日本型IRを造ることになる。その大もとになるのが、IR整備法だ。

ところが二五〇条を超える大がかりな法律を細かく引用しても、日本型IRを示せない。それはいかにもな法律の文章が並んでいることによる。分かりにくいことは承知で、最初に出てくる「第一条」の「目的」を引用する。

適切な国の監視及び管理の下で運営される健全なカジノ事業の収益を活用して地域の創意工夫及び民間の活力を生かした特定複合観光施設区域の整備を推進することにより、我が国において国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現するため、(中略)必要な事項を定め、もって観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資することを目的とする。

国内で造られるIRの数は「3カ所が上限」

押さえたいポイントは次の通り。一「健全なカジノ事業の収益を活用」する。二「地域の創意工夫」と「民間の活力」を生かす。三「国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現」。四「観光」と「地域経済の振興」に「寄与する」。五「財政の改善に資する」。

「そもそも〈健全なカジノ〉はあり得るのか」については後ほど、ギャンブル依存症の問題などと共に考えていく。ここではIRはカジノの収益をあてにし、民間が事業主体となることと、「滞在型観光」を実現させ、地域の観光、経済、財政にメリットをもたらす目的があることを理解しておきたい。

制度面で最初に知るべきは、国内で造られるIRの数は「上限は三」となっている点だ(同法第九条・区域整備計画の認定)。大阪IRは二〇三〇年秋頃の開業に向けて前進しているが、法律上はさらに二カ所に造れる。「東京カジノ構想」が取りざたされる根拠になっている。

ここからは再度、IR整備法の説明資料に戻り、日本型IRの姿をさらに探る。