新しい価値が新しい顧客を生む

これまで真珠は、冠婚葬祭用、また、ある程度上の年齢層に向けたジュエリーアイテムというイメージで見られてきました。

しかし、小ぶりで金魚のようにかわいらしい形は、カジュアルな普段使いもできるなど使い回しもきき、これまで真珠には興味をもたなかった若い人たちの間でも人気が出てきました。

真珠のジュエリー
写真=iStock.com/Gennady Pronyaev
※写真はイメージです

色も形も同じものはひとつとしてない真珠から、世界で自分だけの真珠を選ぶという特別感を味わえるのも魅力のひとつでしょう。

「冠婚葬祭用にフォーマルなネックレスひとつあれば、それ以上買い足すこともないと思っていたけれど、それとは別のものとして買っていく」

というお客さんも多数いるようです。そのため、伝統的な真珠市場と競合せず、養殖業者にとっては通常の真珠による収益を減らすことなく、プラスアルファの収益を上げられるメリットがあります。

直感的なネーミングもストーリー化に貢献

「金魚真珠」が人びとを引き付けるのには、その名前もひと役買っています。

尾崎さんが外観から「金魚みたい」と思ったそのままを商品名にしたことが、実にわかりやすく親しみやすく、愛らしく、多くの人の心を捉えます。

このような感覚・感性によるネーミングは、ネーミングやコピーライトをプロとして手掛ける業界人にはできにくいものです。商品・サービスのコンセプトや理念などから入っていくのが常だからで、見た目の感じからなど、あたかもニックネームをつけるようなネーミングは、あえて避けて通るのです。

しかしプロが理屈をこねたり、ひねりにひねったりしてつけた凝った名称よりも、見た目の感覚からつけたシンプルで感覚的で親しみやすい名称のほうが、覚えやすく印象に残ることがあります。

「語呂合わせ」同様、ネーミングも一種のストーリー化と言えるでしょう。

商品名そのものからストーリーが思い浮かべられるような名称が理想ですが、玄人はだしの洗練された名称になっているかどうかより、心に残り共感を呼ぶことが大事なのです。