10月1日、石破内閣が発足した。これからの日本の政治はどうなるのか。ジャーナリストの宮原健太さんは「石破茂首相は総裁選での主張を曲げて、早期の解散総選挙を強行しようとしている。この変節からは、自身の『致命的な弱点』を隠そうとする意図が読みとれる」という――。
記者団の取材に応じる石破茂首相=2024年10月3日午後、首相官邸
写真=時事通信フォト
記者団の取材に応じる石破茂首相=2024年10月3日午後、首相官邸

永田町関係者も驚いた「石破氏の逆転勝利」

中央政界は石破茂政権が発足するや否や、解散総選挙になだれ込む激動の情勢になっている。

自民党は総裁選を通して結束を深めるかと思いきや、保守系議員が冷遇されて党内対立が激化。

石破首相は総裁選の主張を翻し、十分な論戦をしないまま早期解散に舵を切って野党からの猛反発を招いている。

なぜこのような事態になったのか。

その背景を探ると、石破政権の危うさが浮き彫りになってきた。

「まさか逆転して石破氏が勝利すると思わなかった」

大手マスコミ政治部で石破氏を担当した番記者の1人は、総裁選の結果を見て、驚きながら語った。

「1回目の投票で高市早苗氏が党員票でトップとなり1位通過した時点で、決選でも高市氏が勝つと思っていた。こんな結果になるとは」

高市氏は1回目の投票で党員票が石破氏をわずかに上回り、国会議員票では大きく突き放して計181票を獲得。2位の石破氏は154票と差がある中で決選に突入した。

【図表】自民党総裁選 第一回投票の結果
筆者作成

もともと、石破陣営は党員票で他候補を圧倒することで、決選投票で議員票を引き付ける戦略を描いていたため、高市氏に党員票で負けたのは大きな痛手となった。

それだけに、決選で石破氏が議員票でも都道府県票でも高市氏を上回って逆転した結果は、驚きをもって受け止められた。

【図表】自民党総裁選 決選投票の結果
筆者作成

旧安倍派の一部が高市氏から離反した理由

自民党関係者は語る。

「もともと決選では高市氏には保守系議員の多い旧安倍派や、石破氏と距離がある麻生太郎氏が率いる麻生派、それに呼応して旧茂木派や小林鷹之陣営がつくと見られていた。一方で石破氏には菅義偉氏のグループや、政策の継続性を求める岸田文雄首相の旧岸田派、小泉進次郎陣営がつくと考えられていた。ただ、派閥やグループの合従連衡とは離れた議員も今回は多くいて、どちらが勝つかは予見しがたい状況だった」

そうした中で、石破氏が逆転した理由の1つとして語られているのが、高市氏は保守の中でもタカ派のイメージが強く、来る解散総選挙で中間層が取りにくくなると敬遠されてしまったということだ。

先に行われた立憲民主党代表選では党内保守派の野田佳彦氏が代表に選ばれ、立憲が穏健保守にウイングを広げる中、高市氏では保守の中でも狭い層しか取れないのではないかという懸念が広がっていた。

ただ、それだけではないと自民党関係者は言う。

「実は旧安倍派の一部も高市氏から離反して石破氏についたと見られている。高市氏は過去に派閥を離脱した経緯から、一部の保守系議員とは距離があったからだ」