「半分の費用で新車開発」トヨタの狙い

トヨタが掲げる「新モジュール構造」は、車両をフロント、センター、リアの3分割にする構造で、主力EVのbZ4Xでは、アンダーボディのフロント部分を90点から1点に、リア部分を85点から1点に削減することを目指しています。これにより開発費を将来的には2分の1に、工場投資を2026年までに2分の1に減らすことが可能となります。

新モジュール構造の狙いは、以下の3点に集約できます。

1点目は、インテグラル(すり合わせ)型からモジュール型への移行です。次世代EVでは、車体構造をフロント、センター、リアに3分割したモジュール構造にすることで、現状のガソリン車に比べ車両の開発や生産を容易に行うことができるようにして、車体構造のスリム化と標準化を図ります。

2点目は、従来のトヨタ生産方式の知見をギガキャストに生かして生産効率を高めることです。フロントとリアのボディはギガキャストで生産し、これにトヨタ生産方式の知見を盛り込むことで、各生産工程のムダを削減し効率性を高めます。結果として、車両開発費や工場投資の削減にもつなげることが可能となります。

JAPAN MOBILITY SHOW 2023でお披露目されたトヨタ自動車の次世代型車両(2023年10月、東京ビッグサイト)
撮影=プレジデントオンライン編集部
JAPAN MOBILITY SHOW 2023でお披露目されたトヨタ自動車の次世代型車両(2023年10月、東京ビッグサイト)

「2040年にEVとFCEV100%」を掲げたホンダ

3点目は、自動化による生産効率の向上です。トヨタは、生産中の車両が自走して次の工程を行う場所に移動する技術を開発中で、この実現によりコンベアを無くすことで、生産効率を高めるだけでなく、工場の設備レイアウトの自由度を拡張することが可能となります。

ホンダは、二輪・四輪などの小型モビリティの電動化にはEVが最も有効なソリューションであると捉え、2040年にグローバルでEVとFCEV(燃料電池車)の販売比率を100%にする目標を掲げています。

この目標を実現するために、以下の3つを適切なタイミングで投資判断を行いながら実施する意向を示しています。

1つ目は、ホンダならではの魅力的なEVの投入です。“Thin, Light, and Wise(薄く、軽く、賢く)”という新たなEV開発アプローチにより、ゼロからの発想で創り出す「Honda 0シリーズ」がホンダのEV戦略を担うことになり、まずは、2030年までにグローバルで7モデルが投入されることになります。

2つ目は、バッテリーを中心としたEVの包括的バリューチェーンの構築です。ここで言う包括的バリューチェーンとは、統合化を進めることを意味します。具体的には、EVのコストの約4割を占めるバッテリーを中心に、高い競争力を確保するために、2020年代後半を目処に垂直統合型バリューチェーンを構築して、バッテリーコスト20%以上の削減を目指すことになります。