福田富昭(日本レスリング協会会長)
五輪からの除外危機に揺れるレスリング界、その渦中の人である。剛腕でなる71歳。ビジネス界、スポーツ界でリーダーシップを発揮し、日本オリンピック委員会(JOC)副会長ほか、日本レスリング協会会長、国際レスリング連盟(FILA)副会長を務める。
「寝耳に水だった」と、福田会長は言う。先の国際オリンピック委員会(IOC)理事会で、昨夏のロンドン五輪に実施した26競技のうち、レスリングを「中核競技」から除外することが決まったことについてである。
これで2020年夏季五輪の実施競技から、日本の「お家芸」のレスリングが外れる公算が大きくなった。気が動転するレスリング関係者と違い、福田会長は驚きながらも、冷静さを失わなかった。
「まず分析。なぜ、こういうこと(五輪除外)になったのかを検証する」
ひょっとしてIOC理事会が判断の根拠としたロンドン五輪での観客数、テレビ視聴率、選手男女比などが事実と違っているかもしれない。明確な除外理由を知ることで、IOCの落ち度を突き、対策を練る腹積もりである。
「確かにレスリングはIOCの中では弱い位置にいます。でも、これからやれることはすべてやる。あきらめません。レスリングの国際連盟や各国協会はもちろん、各国の政府からもIOCに働きかけ、あらゆる関係者が動いていくことになります」
富山県滑川市出身。滑川高校から日大に進学し、1963年の全日本選手権でフリー・バンタム級3位、65年の同選手権では優勝し、世界選手権でもチャンピオンとなった。引退後、コーチに転身し、1980年モスクワ五輪ボイコットの際は日本代表フリー陣のコーチを務めていた。
ここで政治力の重要さを痛感する。レスリング協会の役員となり、特に女子レスリングの強化・地位向上を推進する。2004年アテネ五輪からの女子実施の立役者でもある。またユニマット(現ジャパンビバレッジ)の社長にも就き、多数のレスリング選手を社員として雇った。
レスリングを愛し、いつも選手のことを第一に考えている。発想力、行動力は随一。FILAではレスリングを五輪競技に残すための運動の中心に推された。また2020年東京五輪パラリンピック招致を目指す日本の中心人物でもある。
「IOC理事に対してロビー活動を徹底してやっていかないといけない。レスリングの強みをアピールしていく。レスリング残留と東京招致の成功。オリンピックを東京で開いて、レスリングの(日本選手の)活躍をみんなに見てもらいたいのだ」