一方、管理職手当は7万円ですから半分しかない。私がその同期に、「自分の手取りが少ないけん、裏金を懐に入れとるんか?」と言ってやったら、「仙波、分かってくれや……」って。

――裏金を告発して周囲の反応はどうでしたか。

それはもう、どれだけ村八分にされたか。皆さんの想像がつかないほどです。2005年に裏金問題を実名で告発し、記者会見をしたことはお話しましたが、その1時間後、私は拳銃を取られました。その理由は、拳銃を所持させることができないほどの不良警官だということを、世間に知らしめるためだと思います。

警友会からの入会拒否

さらに会見後、実質2日で左遷されました。急遽きゅうきょ新設された「地域課通信指令室企画主任」というまったく仕事のないポストで、朝8時半から夕方5時15分まで、ただ椅子に座るだけ。たった一人の人事異動でした。それからの500日間は、誰とも話せず、誰一人あいさつもしません。僕は廊下の真ん中を歩くんですけど、廊下ですれ違ったら全員が壁に貼りついてましたよ、顔を合わせたくないから。

――私は、仙波さんが警察を退職される日のドキュメント番組を拝見したことがあります。仙波さんを応援する市民の方々から花束を受け取っていましたね。

あのときは嬉しかったですね。でも、警察組織からのいじめや嫌がらせはその後も続きました。警察官は退職後、皆、「警察友の会(警友会)」というOB会に入るんですが、松山南署支部の会長からは、「あなたは警友会に入れません」と手紙がきました。

――OBなのに入会拒否ですか。

もうひとつ、再就職の希望を出していたのに、私一人だけ斡旋がありませんでした。それで厚生課長に直接「課長、退職まであと2週間しかないのに、俺だけ再就職の話がないのは、いじめか?」と聞いたんです。そしたら課長は震えながら「いいえ、ちょっと忘れておりました」と。厚生課長は一般職員の最高ポストなんですが、会計課で一生懸命裏金を作ってきたような人がもらえるポストだったので、私のことが怖かったんでしょうね。厚生課の人たちはみんな僕と目を合わせないように、下向いたりしてね。

仙波氏
筆者提供
2005年、記者会見に臨む仙波氏。現職警察官として裏金問題を告発した

再就職先からは採用拒否

――その後、再就職先の紹介はされたのですか。

次の日に「ここがありますから、どうぞ」と厚生課から連絡がありました。再就職先としては一番給料が安いのですが、警察の委託者がおこなっている車庫証明係でした。試験を受けてくれと言うので有給休暇を取って行ったら、出された試験問題は「300円のモノを買いました、消費税いくらでしょう?」みたいな稚拙な内容で、思わず「これ冗談?」とあきれました。もちろん満点でした。

――すぐに採用されたわけですね。

いえいえ、1週間後に「就職先にポストがないので採用できない」と断られたんです。最初から採用する気もないのに試験を受けさせて、挙句の果てに「ポストがない」と言うわけです。あまりに酷いので「弁護団がいるので損害賠償請求するから」と言ったら、「どうか、こらえてください」と泣くように言われましたよ。

僕が退職した15年前、愛媛県警の定年退職者は約100人でした。そのうち約70人が再就職を希望していましたが、再就職先がなかったのは私一人だけでした。