横浜中華街で出てくる料理とはまったく違う
2022年にユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされ、一躍その名前が世間に知られることになった「ガチ中華」。東京近郊や大阪に増えている「ガチの」「まじの」、日本風にアレンジされていない中華料理という意味だが、そのディープさやマニアックさがウケて、在日中国人だけでなく、中華料理好きの日本人の間でも急速に人気が出ている。
「まだ勇気がなくて一度も行ったことがない」「一緒にガチ中華に行く人がいない」という人もいるかもしれないが、興味を持っている人は多いのではないだろうか。
私は新刊『日本のなかの中国』で、中国のSNSだけでしか予約できず、ほぼ中国人の顧客しか相手にしていないガチ中華が都内にあることなどを紹介。〈「約500円のワンタン」目当てに中国人がやってくる…東京で「ネット予約できない中華料理屋」が増殖している理由〉にも書いた通り、近年はさらに新しいジャンルのガチ中華が増えてきているのが特徴で、横浜中華街などに多い広東料理(点心)や北京料理(北京ダック)など、日本人に長年親しまれてきた中華は含まれていない。
明確な定義はないものの、「ガチ中華」といえば、これまで日本にあまり入ってきていなかった中国のマイナーな地方料理、激辛料理、珍しい食材(カエル、ザリガニ、鴨血、ドクダミなど)を使ったものが多いというのが私のイメージだ。
食材の仕入れ、調理、利用客もほぼ中国人
そこで本稿では、「ガチ中華の人気ジャンル、ベスト5」を紹介してみたいと思う。東京近郊には数百、あるいは数千のガチ中華料理店があると言われているが、前述のように明確な定義がないため、ガチと呼べるか微妙と思える店もあり、店舗数など詳細もわからない。
また、在日中国人の友人に「どのガチ中華がいちばんおいしいと思う?」と聞いても、それぞれの出身地の料理や、友だちが経営する店を挙げたりして公平ではないので、ベストテンのようなものも出しにくい。しかし、最近人気のジャンルといえば、今のガチ中華の傾向がわかるのではないかと思う。
ここ数年、経済的に豊かになった在日中国人は、彼らだけで集まって巨大な経済圏を築いている。そのことは〈なぜ「日本語が話せない」在日中国人が急増しているのか…国内にじわじわ広がる「巨大中国経済圏」の実態〉でも紹介したが、それはインバウンド、不動産売買、製造販売などビジネスだけにとどまらない。中国人の胃袋を満たす飲食業界でも、食材を提供する側、調理する側、食べる側のほとんどすべてが中国人という世界が成り立ってきたのだ。