「四川料理よりもずっと辛い」唐辛子たっぷりの一皿

1.湖南料理

中国の内陸部、湖南省の料理を指す。ここ1~2年、日本のテレビ番組などでも「実は四川料理よりもずっと辛い」と紹介されて有名になった。湖南料理の辛さは花椒ホワジャオの痺れる辛さではなく、唐辛子の辛さだ。中国八大料理のひとつに数えられるが、日本にはこれまであまり浸透しなかった。

唯一、以前からあった店といえば、新宿歌舞伎町にある「湖南菜館」だ。湖南料理の老舗的な存在で、経営者の李小牧氏がメディアで有名になったこともあり、都内のマスコミ関係者などの間ではよく知られた存在だったが、当時は「ガチ中華」という言葉もなく、特別珍しい料理を提供しているという印象もなかった。

しかし、近年、東京・高田馬場の「李厨」や、系列の「湘遇TOKYO」などがガチ中華としてメディアで紹介されるようになり、湖南料理というジャンルも注目されるようになった。最近よく名前を耳にするのは「味上湖南菜館」。湖南省発の店で、東京・上野に上陸。在日中国人で賑わっている。

2015年にオープンした四川省発の「海底撈火鍋」などに端を発した辛い鍋のブームもあり、私が見たところ、ガチ中華の中でも、とくに辛い料理が多い湖南料理が最も人気のジャンルとなっている。

串料理
筆者の友人より提供
辛いスープの鍋で羊肉などを煮る料理は若者に人気

『孤独のグルメ』にも登場した新小岩のディープな店

私自身、2016年に湖南省の省都、長沙の郊外に仕事で1週間ほど滞在したことがある。その頃は湖南料理の知識はあまりなかったが、宿泊させてもらった学校の宿舎の食堂の料理がとにかく辛かったという記憶がある。

代表的な料理は「剁椒魚頭(ドゥオジャオユートウ)」という辛い魚の蒸し料理やクセのある「臭豆腐」。ほかに毛沢東が大好きだったという「毛氏紅焼肉」などがある。そういえば、湖南省にある毛沢東の生家を見学した際、周辺の料理店の店先にこの料理の看板が出ていた。

2.貴州料理

日本ではほぼ馴染なじみがないといっていい貴州料理は、南部の内陸部にある貴州省が発祥だ。湖南料理が四川料理と並んで「辛い料理の代表」となっているが、四川省に隣接する貴州省の料理も相当辛い。

都内の貴州料理といえば、真っ先に名前が浮かぶのは新小岩駅に程近い「貴州火鍋」だ。テレビ番組『孤独のグルメ』(テレビ東京系)や「マツコの知らない世界」(TBS系)などで紹介されて人気となり、干し納豆火鍋や酸湯魚(発酵トマトと魚の火鍋)などの貴州名物や、発酵大豆の和え物、発酵野菜入りポテサラ炒め、ドクダミと豚バラの回鍋肉など、一般の中華料理店ではまず食べられない個性的な料理がある。

ドクダミ料理
筆者撮影
筆者が貴州省で食べたドクダミの和え物。サッパリとしておいしかった