川勝知事の「言い掛かり」の発端
2022年8月8日、川勝知事はツバクロ残土置き場が計画される燕沢付近を、大勢の取材陣を引き連れて視察した。
視察には、地質構造・水資源専門部会の森下祐一部会長(静岡大学客員教授)、塩坂委員が同行した。
ツバクロ残土置き場予定地で、森下部会長は「JR東海が行った土砂流出のシミュレーションの条件に問題がないのか、南海トラフ地震が発生しても問題ないのかを議論する必要がある」などととんでもない言い掛かりをつけた。
森下部会長の発言を受けて、川勝知事は、地震発生後の土石流によってできる天然ダム(河道閉塞)の懸念を挙げた。
JR東海担当者は「前回の専門部会で地震に対する安全性の検討結果を示している」と強調したが、塩坂委員が「懸念しているのは、地震によって大規模な土石流が発生することだ」などとJR東海の説明を無視した。
その結果、川勝知事が「2人の専門家の意見を聞いて、深層崩壊について検討されていないことが初めてわかった」と驚くべき発言をした。
その上で、「熱海土石流災害を踏まえて燕沢付近に残土置き場を造成するのは極めて不適切であり、不適格だ」などと強硬に反対することを宣言したのだ。
マスコミも利用した「連係プレー」
川勝知事と森下部会長、塩坂委員との見事な「連係プレー」だった。
牽強付会な理由を挙げて、燕沢付近の位置選定に問題があるとして、「燕沢付近の残土置き場をやめろ」を求めたのである。
知事視察の本来の目的は、当時議論の焦点となっていた東京電力の「田代ダム」だった。
ところが実際には、「ツバクロ残土置き場をやめろ」を報道陣の前で表明し、大きく取り上げてもらうことだった。
28人もの犠牲者を出した2021年の「熱海土石流災害」を持ち出すことで、テレビなどが飛びつき、大きく取り上げることを川勝知事はわかっていた。
川勝知事得意の「情報操作」が功を奏した。