喜んでもらうことが「本当の自己アピール」

そういうスタンドプレーってむなしくなるでしょう、テレビを見てても。だから僕は怒るんだ。「それは違うよ。誰もそんなことなんか聞いてない!」って。

野球選手はグランドでプレーするわけでしょう。彼らが最高のプレーをしたときに観客が喜ぶ。それをグランドプレーというんです。観衆目当てのプレーをしたって誰も喜ばない。つまり自分の本来の土俵から外れたところでどんなかっこいいことを言っても、それはスタンドプレーに過ぎない。自分のグランド内で最高のプレーをして喜んでもらえるのが、自己アピールでしょう。

会社でもアピールとしてのグランドプレーは必要です。でもスタンドプレーはダメ。ゴマすりってのは、どちらかというと、スタンドプレーに近い。これは、たとえ上に認められても、長続きしない。だって上司なんか、いつか変わるわけ。変わったとたんにゴマすり男はアウトだ。つまり、その上司以外、みんな「あのヤロー!」って思ってるわけでしょう。

「人づきあいがいい」だけじゃ意味がない

何もゴマすりじゃなくても、スタンドプレー的なものは山ほどある。たとえばつき合いなんかがそうだ。

田原総一朗『無器用を武器にしよう 自分を裏切らない生き方の流儀』(青春新書インテリジェンス)
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よく、最近の若い奴はつき合いが悪くなった、と上司がグチを言うでしょ。カラオケぐらいできなきゃダメだとかね。確かにそういったつき合いは、人間関係を円滑にする場合もあるけど、いいんです、そんなことは。ゴルフもできない、カラオケもダメだといえば、なさけない話に聞こえるけど、でも仕事ができればいいわけでしょ。つき合いはできないけど仕事は人一倍やる、と。周りに合わせるだけの「スタンドプレー」じゃしょうがないんだ。

もっと言えば、やりたいことがなきゃ話にならない。つき合いがよくて、お世辞が上手で、カラオケもうまくて、それで、いったいあんた、何をやりたいの? と聞かれて何もない人間は、これは、いったい何のためのアピールなのか。だってアピールするってのは何かしたいことがあって、そのために自分をアピールするもんでしょう。カラオケ? ゴルフ? そんなのは自分のグランドプレーじゃない。だったらプロの歌手になったほうがいい。

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