額に汗して働くのは嫌だけど、「安定した生活を送りたい」

こうした懸念は近年の新入社員の働く価値観とも関係があるかもしれない。ラーニングエージェンシーが実施した「新入社員意識調査」(23年4月1日~4月11日、4428人)で「仕事を通じて成し遂げたいこと」を質問した。

最も多かった回答は「安定した生活を送りたい」であり、65.8%だった。続いて「自分を成長させたい」(57.8%)、「家族に恩返ししたい」(45.8%)という順番だった。

腕を組んで写真に納まるビジネスチーム
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安定した生活を送りたい、という新人の仕事への向き合い方について企業研修を手がける講師はこう指摘する。

「安定志向の新人は、昇進意欲に欠ける傾向があり、管理職や経営層のへのキャリアアップには関心が薄く、人との競争を好まない。一方、プライベートな時間を何よりも大切にし、仕事はほどほどに取り組む傾向がある」

残業をバリバリしなくてもいいから、せめて業務時間は力を存分に発揮してほしい。会社はそう願うが、彼らは仕事に割く体力を極力温存したい。それで、コスパよく働いてよいパフォーマンスを出せるなら、それでもいいかもしれないが、仕事内容が見合わないこともしばしば。「給料泥棒」と断罪されてもしかたない。

20代はいい働きを見せていたのに、30代で急降下する人もいる。30代は一人前のスキルを持ち、第一線での活躍が期待されている人たちだが、急にペースダウンしてしまうのだ。IT企業の人事担当者はこう嘆く。

「20代の頃は営業担当のSEとしてがんばっていたが、30代前半になって取引先の訪問がみるみる減少し、新規顧客の開拓にも熱心ではなくなった社員がいる。後輩の指導もおろそかになり、上司への報連相も雑になった」

もしかしたら仕事以外での悩みがあるかもしれないと上司の課長が心配し、面談したところ理由は違った。

「同期のライバルが係長に昇進したのがショックだったそうです。20代は一生懸命に仕事をしていた社員がライバルに抜かれて息切れしてしまうケースがあります。当社の課長の平均年齢は37~38歳だが、35歳ぐらいで係長になっていない社員はほぼ課長になるのは難しい。同期で課長になるのは4割もいない。だから、そんなに落胆しなくてもいいのではないかと上司が説いてもあまり効果はなかったようだ」(人事担当者)