為時が活用したかったまひろの能力

今鏡』などに掲載されている説話によれば、淡路守に任じられたとき、為時は以下の漢詩を書いたという。「苦学の寒夜 紅涙襟をうるほす 除目の後朝 蒼天眼に在り(厳しく寒い夜も学問にはげみ、血の涙で襟を濡らしてきたが、除目の結果を知った翌朝、目には青空が映るだけだ)」。

要するに、努力をしてきたのに、所詮は下国の国守――という嘆きである。これを一条天皇が読んで感涙し、それを受けて、藤原道長が為時を越前守にした――という話になっている。