「首相には才能、努力、運が必要」
石破氏は「政治家生活の集大成」「最後の戦い」と位置付けるが、5度目の挑戦ながら、依然として、推薦人20人を確保するのに汲々とし、二階派などから数人借りている。
同僚議員にこれほど疎まれるのはなぜなのか。時の政権に後ろから鉄砲を撃つような言動、仲間と飲み食いするより宿舎に帰って本を読むという政治スタイルが受け入れられないことは知られている。旧石破派・グループ(水月会)を脱会した議員からは「総裁選で支援しても、感謝の言葉がない」「カネとポストの面倒は見ない、と広言している。付いて行けない」との理由が聞こえてくる。
石破氏と接点がある閣僚経験者らは「政策にこだわりがあるから、一緒にやれないことがある」「演説はできても、議論ができない。リーダーとしては致命的だ」「石破が政権を運営したら、無茶苦茶になる。想像もしたくない」と評する。散々である。
石破氏が5月14日夜、都内の日本料理店で、小泉純一郎元首相、山崎拓元副総裁らと会食した際、小泉氏は石破氏に「首相になるには才能、努力、運が必要だ。努力の中では義理と人情を大切にしなさい」と諭したという。石破氏も「足らざるところ」と認めている。
こうした石破氏に推薦人を貸してでも総裁選に出馬させるのは、党内の一部に、世論調査で次の総裁に20%もの人たちが名前を挙げている以上、その人気を党の再生に使わない手はない、という強かな計算があるのだろう。
「リプレース(建て替え)も選択肢」
河野氏の挑戦は3度目だ。麻生派をバックに総裁選に臨む。8月26日の記者会見で「総裁選後の人事に派閥を介入させないことが大事だ」と訴えたが、派閥への批判が高まる風潮では支持の広がりを欠く。
持ち前の突破力も、マイナカード、マイナ保険証の推進が高齢者らからはごり押しと受け取られている。エネルギー政策でも持論の「脱原発」を修正し、「リプレース(建て替え)も選択肢」と踏み込んだが、昨今の電力供給事情を見れば、今更の現実路線と受け止められ、党内外にあまりアピールしなかった。
前回2021年の総裁選では「小石河連合」として河野氏を支えた小泉、石破両氏が、今回はライバルとなって立ちはだかる。河野氏の劣勢は、麻生氏の誤算でもある。
麻生派は8月27日、横浜市内のホテルで派閥研修会を開いた。麻生氏は、河野氏支援を基軸にしながら、「一致結束(箱)弁当みたいに縛り上げるつもりはまったくない」と述べ、決戦投票では派として一致した行動をとることを前提に、第1回投票で他候補の支援を容認する考えを示した。だが、この戦略は河野氏が2位に食い込まないと成就しない。
小泉氏と石破氏の決選投票になったら、どう対応するのか。長く主流派を形成し、要職を占めてきた麻生氏が、非主流派に転落する危機に面しようとしている。