数字が一人歩きする恐ろしさ
もちろん、人生100年時代を踏まえて、65歳から30年を超えて長生きする場合に備えるために残していると解釈することもできるでしょう。しかし、2022年のペースだと貯蓄額を使い切るのにおよそ81年程度かかります。また、この間にどちらかが死亡し、高齢単身世帯になるとさらに長い期間をかけて貯蓄を取り崩していくことになるでしょう。
この騒動は、数字が一人歩きすることの怖さを示す典型例ではないでしょうか。
現在でも一部メディアで「老後2000万円不足」などの見出しが使われます。金融庁の報告書は本来、超高齢社会における金融サービスのあり方や、家計の安定的な資産形成の実現に向けてNISA制度の恒久化などが最大の焦点となるはずでした。
しかし、結果として、本来の目的に沿って議論が進まないばかりか、冷静に行うべき年金や個人投資に関する制度議論にも遅れを生じさせるものとなりました。
私たちはこうした不安を喚起する情報に惑わされないことが重要です。そして、老後のライフスタイルは自らの資産と収入に合わせて決めていくことが大切です。そのための準備は、現役時代から始めていくべきでしょう。