渋る該当者を「希望退職」のリストに加えるため、経営陣は面接で手練手管を使う。もっとも、「数千万円の退職金額を記した紙片1枚で、人は変わる」(同)らしいが。

「希望退職の応募者が足りないときは、各事業部の本部長にリストアップしてもらうが、共通しているのは仕事を覚えない、やる気のない、愚痴しか言わない人」と明言するのは、中堅不動産会社の人事担当者。同社の40代後半の営業責任者は、業績が悪いと「自治体の予算が少ないから」などと愚痴三昧。震災後の復興需要による業績アップは「オレの力」と誇ってボーナス額に文句をつける。

「じゃあ、他の地域で業績上げてくれ」と水を向けると「いや、やり残したことが」と頑として動かない。

「今後、狙われると思う」(同)

うつなどメンタル面の疾患で長期の休暇を取る社員は、経営陣には悩みのタネ。有給休暇の消化も併せて、退職に追い込むには時間がかかる。

「“うつ”を理由に休暇中の30代後半のバツイチ女性社員。しかし、子供を保育園に預けたりと生活は専業主婦同様。そんな休暇中も給料がほぼ全額出ていたのに、それを何とも思っていなかった様子」(田上氏)

都内に事務所を構えるある探偵事務所が手掛けた案件は、次の通りだ。

「建設会社の50代経理担当が、部下の40代女性と懇ろに。社長の依頼で調べたら、会社の金で高級レストランで会食し、女性のマンションに入り浸っていた」。動画を撮り、会計上の証拠を突きつけて解雇した。

もっとも、既出の方々は「上司の個人的感情は必ずある」(田上氏)、「上司と馬が合わないとダメ」(不動産)、「結局は上司の好き嫌い」(監査)と異口同音に強調する。経営陣に上がる社員の情報の起点は直属の上司。

「上司に嫌われる人」こそ、クビに至る最重要条件かも。

(PIXTA=写真)
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