失敗は許されない

莫大なコストをかけるプロジェクトに失敗は許されない。ただシステムを入れ替えるのでなく、業務改革で高い成果を出すのがプロジェクトの最終ゴールだった。

「意識改革が最も重要で高いハードルでした。現状にとどまらず、新しいことにチャレンジする。ここで取り組まなければ他社はどんどん先へ進み、当社は経営の意思決定が遅れかねない。全員で危機感を共有するところからスタートしようと、ものすごく時間をかけて説明しました」

小さな成功を重ねて社内のムードが激変した

長期戦の業務改革プロジェクト。途中で活動疲れが出ると予想された。モチベーションを下げないために「Quick-Win」と呼ぶ短期的な改善施策を順次実施し、成果を実感しながら進むように心がけた。

意識の高まりが見えだすと手応えを感じた。ネガティブな意見は聞こえなくなり、メンバーから「私がやります」「変えましょう」「システムで無理なら運用でカバーします!」とポジティブな発言が聞かれるようになった。

「小さな成功を積み重ねる中で、社員の意識は変わって行った」と最勝寺さん
撮影=遠藤素子
「小さな成功を積み重ねる中で、社員の意識は変わっていった」と最勝寺さん

「責任者は私でしたが、実際に進めたのは優秀な推進リーダーたち。メンバーが一丸になって取り組んだ結果です。みんなの原動力はやはり、現状のままではいずれ窮地に陥るという危機感でした」

2019年4月に新システムがリリースされたあとも、DXへの取り組みは継続された。一気に進んだのは、2020年初頭から広がったコロナ禍への対応だ。リモートワークの環境が整備され、できるだけ出社を控える状況で年度末を迎えた。

「東日本大震災やコロナ禍のような大きな危機が第4四半期に起こると会計部門は大変です。何が起ころうと、スケジュール通りに決算を締めなくてはいけない。みんな必死でした。コロナ禍が広がった2020年に、システムの重要性は一気に高まったと思います」