中東地域で緊張が続く背景には何があるのか。中東に詳しい国際情勢YouTuberの石田和靖さんは「アメリカをはじめとした西側諸国の失策は大きい。中東諸国にとって、アメリカのジョー・バイデン大統領は『招かれざる客』で、日本では悪役のように報じられるドナルド・トランプ前大統領のほうが中東和平に貢献していた」という――。

※本稿は、石田和靖『10年後、僕たち日本は生き残れるか 未来をひらく「13歳からの国際情勢」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

中東諸国と「良好な関係」を築いたトランプ前大統領
中東諸国と「良好な関係」を築いたトランプ前大統領(写真=Gage Skidmore/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

トランプ氏は中東諸国と「良好な関係」を築き上げた

バイデン大統領は、「ドルの武器化」によって第三世界との溝を深めてしまいました。しかし、その前の大統領であるトランプがアメリカ大統領だった2016年から2020年までの間は良好な関係を築いていました。特に、中東各国とはとてもうまくリレーションシップが築けていました。

「イスラエルとアラブ諸国は仲が悪い」というイメージを持っている人は少なくないと思いますが、実際には2020年に、トランプ大統領が仲介することで、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、モロッコ、スーダンのアラブ4カ国の国交を正常化する「アブラハム合意」が締結されています。

これまでアメリカは、1979年にジミー・カーター大統領の仲介でエジプトとイスラエルの間で国交を樹立させ、1993年のビル・クリントン大統領の時代にイスラエルとパレスチナが国交を樹立する「オスロ合意」を締結しています。

この歴史的和解の功績が認められ、イスラエルのイツハク・ラビン首相はノーベル平和賞を受賞したほどでした。

ところが、その後は約30年間にわたってイスラエルと中東アラブ諸国の関係は進展しませんでした。暗礁に乗り上げていた中東和平を、トランプ大統領は一気に4カ国と進めた。こうした動きを、サウジアラビアも歓迎していました。

日本では「悪役」のように報じられているが…

イスラエルとサウジアラビアの関係性も融和され、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とエリ・コーエン外相が、毎年恒例のイスラム巡礼のために、イスラエルのテルアビブからサウジアラビアのジェッダに向かう直行便を就航させる交渉を、サウジアラビアと行っていたほどです。

ジェッダ空港は、メッカから一番近い空港なので、「メッカへの玄関口」とも言われている。だから、イスラエルからメッカ巡礼をする人のために直行便を就航させたらいいじゃないかと計画していたわけです。

中東和平を考えたとき、イスラエルとアラブの盟主であるサウジアラビアの歩み寄りは、とても大きなインパクトを持つことは想像に難くないと思います。そういった歴史的な快挙が進んでいたんです。

トランプ大統領は、ビジネスマンであり、強烈なキャラクターを備えていることから、ここ日本では悪役キャラクターのように報じられています。

だけど、彼が任期中の4年間は一度もアメリカが介入するような戦争は起きていない。それどころか、いま説明したように中東和平に向けた交渉を着実に行っていたほどでした。