NISA・iDeCoにおける税制上の優遇

現在の日本の税制では、株式、債券、投資信託などの有価証券から得られるインカムゲイン、キャピタルゲインに対しては、個人の場合、原則として所得税15%、住民税5%の税率が適用される。これに復興特別所得税(2037年末まで)の0.315%が加わり、合計20.315%となる。

この税金をどのように納付するのかは本書の範囲外だが、一番簡単で手間いらずの方法は、証券会社に開く口座を特定口座(源泉徴収あり)にしておくことだろう。

とはいえ、すべてを証券会社任せにせず、自分自身で株式の売買や配当を記録しておくことが望ましい。

投資信託の場合、税的な優遇措置の利用が重要になる(図表4)。

【図表】投資信託の税制上の優遇

NISAでは株式そのものよりも投資信託の優遇枠が大きい。「つみたて投資枠」が投資信託(ただし金融庁の基準を満たした投資信託)に限定されているからである。なお「成長投資枠」は、投資信託か上場株式の両方を用いることができる。

個人型年金としてのiDeCoを有価証券で運用しようとすれば、投資信託を利用することになる。株式に直接投資することは制度として認められていない。

S&P500型ETFを活用すべき4つの理由

投資信託の購入は、最終的には読者自身で判断すべきだが、おすすめを示しておきたい。

1つは、個人としてよく知らない産業分野に特化した投資信託の活用である。

もちろん、その産業分野が本当に成長するのかどうかは自分自身で判断しなければならない。一時的な熱狂だけでは、いわゆるテーマ型ファンドと同じであり、すぐさま熱気が冷めるかもしれない。

もう1つはETFである。それも、海外の株価指数を模倣するように設計されたパッシブ運用型のETFである。一般のアクティブ型など、他のETFはとりあえず無視していいだろう。

その中で推奨したいのは、バフェット氏と同じなのだが、アメリカの代表的な株価指数、S&P500を模倣するETF(以下、S&P500型ETF)である。

理由は次のとおりとなる。

1つに、アメリカ市場の株価形成は、完全に投資家もしくは参加者(たとえばM&A的な参加者)任せである。その投資家や参加者は他の市場と比べて多様化しているから、多様な情報に基づいて株価が形成されている。

一言で表現するのなら、忖度はなく、付和雷同が比較的少ない。他国の市場と比べて、相対的にだが、株価に信頼性がある。

2つに、S&P500は原則として、アメリカを代表する500社で構成されている。500社を選ぶ基準としては時価総額が柱になっているから、「多様な投資家や参加者によって選ばれた上位500社」ともいえる。つまり投資家が魅力的だと考え、実際に株式を買っている500社だということになる。

3つに、アメリカの政治や経済には毀誉褒貶きよほうへんがあるものの、先進国であり、その先進国の中で一番成長力が高い。先端的な企業が成長している経済社会でもある。とすれば、長期保有の対象としての適格性が高い。

4つに、S&P500型ETFの時価総額はアメリカ市場においても非常に大きく、売買が容易である。かつネット証券経由ですぐさま注文を出せる。